オワコン2014年11月03日 17:44

 すでに命脈の尽きたコンテンツのことを「オワコン」と呼ぶらしい。

 古典的なものとしてはTV。たしかにほとんど見なくなった。特に地上波の番組の10代〜20代女性に思い切り振り切った情報番組や、子どもでもそっぽを向きそうな子供だましを連発するドラマを50分近くも見るのは苦痛以外の何物でもないし、CMの度に同じ内容を繰り返すバラエティもうっとおしくてたまらない。

 最近は紙の本、それもボリュームのある、伏線をたっぷり張った物語性の強いものは「オワコン」と言われているらしい。

 いまどきの人はスマホで読書するので、一画面で一覧性のないものはだめ。空き時間に読書するので、短いサイクルで完結がないとだめ、常に区切りはクリフハンガーを仕掛けて置かないとだめ。どこかで聞いたようなと思って、思い出したのがかつてのB級連続活劇映画のフォーマットだった。
今の小説はこういうものでないと売れないし、生き残れないそうだ。

 勢い紙の本は「オワコン」。さらに、売れ筋の本の構造にそぐわないジャンルも「オワコン」ということになる。その最たるものは「ミステリ」らしい。大ヒットミステリもあるではないかと反論が聞こえてきそうだが、残念ながら、ヒットしたミステリはほとんど「B級連続活劇映画のフォーマット」に則った構造のものか、キャラクター偏重型のいずれかだ。キャラクターに偏重すれば、キャラクターのお約束パターンを使うことでいくらでも長丁場を細切れにできる。TVドラマの手法そのものだ。

 「ミステリ」以上にそぐわないのが「SF」と「ファンタジー」と言えるだろう。特に日常とかけ離れた世界観を構築するものは難しい。いずれにせよ、じっくり取り組むタイプの本は「オワコン」ということらしい。

 TVが軽薄化したところで、さほど気にはしないが、本が軽薄化するのは残念だ(それは音楽も同様)。だが、あまり悲観もしていない。まさに「オワコン」と言われ、見捨てられたはずのアナログレコードは、確実に息を吹き返し、堅実なマーケットを形成している。本質がしっかりしていれば、「オワコン」などという評価も一時の風潮となり、「オワコン」の「オワコン」がやってくるのではないかと思う。

 そう言えばTVも、その底力はかつて低い評価しかされていなかった深夜放送から湧き上がっている。叩かれ、無視され、バカにされた中から、這い上がってくる力こそが本当のコンテンツの力なのだろう。

 そういえば「クールジャパン」の根底にあるコンテンツもまた、「ばからしい」「くだらない」「教育に悪い」「いい加減に卒業しろ」と切り捨てられ続けたものばかりだった。