「アデン、アラビア」「名誉の戦場」読了2015年01月29日 08:49

ポール・ニザン「アデン、アラビア」読了。

紀行文でもなければ、小説でもない。そこに気づくまで一迷走。エッセイと言うには重く、激烈な内容。ぼやっと読んでいると、あっという間に迷子になって、睡魔に襲われる。

気を入れて、ゆっくりと考えながら読むことが求められる。今風の「読書」では弾き飛ばされてしまう。長くはないが、読み応えと疲れは相当のものだった。

ジャン・ルオー「名誉の戦場」読了。

こちらは、フランスの田舎町の家族の話。淡々と日常が描かれているが、その背後に第一次大戦。戦場でドイツが使用したイペリット・ガスの惨禍が滑りこんでくる。

そして、オープニングの雨。小糠雨で始まり、ラスト近くもまた雨。この雨は涙雨なのか、それとも人々を浄化する慈悲の雨なのか。淡々と、時にユーモラスに、家族の日々と悲劇が綴られている。声高なところは何もない。タイトルそのものが皮肉のようにも感じられる。

どちらもフランスの作品。訳文が日本語としては固く感じるのは、フランス語の表現を引き継いでいるからかも知れない。