「マイトレイ」「軽蔑」読了2015年05月22日 06:15

 エリアーデ「マイトレイ」・モラヴィア「軽蔑」読了

 エリアーデと言えば、大宗教学者だが、その彼の若い頃の小説。ヨーロッパ人が赴任先のインドで、現地の女性と恋に落ちる。しかし、2人の間の文化コードは大きく違い、恋はなかなか進行しない。第一、この恋愛が歓迎されているのか、ヒロインの「マイトレイ」が主人公に恋しているのかどうかさえ、主人公には定かにすることができない。手探りで恋に落ちる2人。
 恋愛小説というより、ミステリのような感じ。この異文化接触の経験が、後にファーストコンタクトもののSFというメタファーを産んだのかとも思う。

 「軽蔑」の方は、夫を軽蔑し、遠ざけるようになる妻エミーリオに対して七転八倒する夫リッカルドの話。一人称小説で、エミーリオは軽蔑の本当の理由を最後まで口にしない。作品は終始リッカルドの一人相撲。おまけにリッカルドは、やってはいけないことを次から次へとだだっ子のようにやり続け、ますますエミーリオの軽蔑を受けてしまう。最後にはリッカルドを雇った映画プロデューサーがエミーリオを奪ってしまい、リッカルドは妄想と幻想の中で復縁を求める。そしてラストへ。
 一人称で語られるリッカルドの内面が、本当に真実かどうかは疑わしい。かなり自己弁護とそれに伴う歪曲や言い訳が見え隠れする。この小説の書き手は信用できない書き手と言えるだろう。と言えば、クリスティの「アクロイド殺し」を連想する。文面を鵜呑みにできない小説。