EONIAN2015年06月09日 22:41

 「楽園追放」を観た。手堅くまとまったSFアニメで、正直気に入った(そして、例によって興行成績はあまり芳しくなかったようだ)。
 作中にも何度か歌われ、エンディングにも使われた「EONIAN]という曲も気に入ったので、そのEnglish VersionをCDからリッピングし、192kHz24bitにサンプリングしなおして、Volumioを経由して、メインシステムで再生したところ、ラストのサビの部分など、もう聴くに耐えないひどいクリップ状態だった。なにせストリングスとコーラスが「バリバリ」と歪んで聞こえてくるのだから、もうこれは演出としてのディストーションを遥かに越えた「騒音」の域である。
 オリジナルの44.1kHz46bitのデータは当然残っているので、Audacityで読み込んで見たところ、こんな状態だった。
EONIANのAudacityでの解析結果
 後半はほとんど波形が潰れてしまっている。5分を過ぎたあたりは再生しても「騒音」モードだ。Audacityであれこれ補正をかけてみると、波形こそ若干見栄えが良くなるが、再生音は大同小異。小音量でこのデータを再生しても、5分を過ぎたあたりはかなり「汚くてがさつ」な音だ。ましてメインシステムでそこそこの音量で流してしまったのだから、アラが丸出しになってしまったのも頷ける。
 pops系は最近では音圧重視のマスタリングで、クリップした状態のものが多くあるとは聞いていたが、ここまでひどいとすでに商品価値そのものが減じていると言っていいだろう。意図的に聞く側に不快感を与えるためのクリップ音を現代音楽で導入することもないではないが、この曲はどう考えてもそんなことを意図しているとは思えない。言ってしまえば「台無し」である。
 mp3にスマホで、安いヘッドフォンでしか音楽を聞かない、こういうマスタリングの音楽しか聞いたことがない人々には、音楽は「こんなもの」で、クリップするぐらい「迫力がある」と感じるのかもしれない。本物の音を知らせないようにしていれば、こんな「台無し」音源でも商品になるのだろう。顧客の能力が低いほうが、作る側もいい加減な商品で儲かる。資本主義(=お金がすべて)では、これこそが「効率的」で「優れた商売」なのだろう。
 また一歩、音楽から遠ざかっていく自分がいる。