ハイエンドオーディオ2016年04月30日 06:41

 最近、「ハイエンドオーディオ」なる音響機器を展示・販売するイベントに顔を出した。

 雑誌などで目にする高額機器の実物が目の前にずらりと並び、ダークスーツの販売員然とした男性陣や、メーカーからの人材らしき人々が、デモンストレーションに懸命だ。

 価格も5ケタ中盤あたりは少数派。6ケタなどは当たり前、7ケタものが目白押し。中には8ケタなどというものまで。

 肝心の音の方はと言うと、残念ながら心を奪われるような音は聞こえてこなかった。いかにも低音が出ていますと言いたげな、モワッとして締りのない音(ヘッドフォンで配信音源やPCのデスクトップシステムしか知らない人には新鮮か?)や、どこか小奇麗だが腰の座っていない音(圧縮音源しか知らない人にはクリアに聞こえるか?)。

 正直、これなら今の我が家のさほど高級とは言えない、それも自作アンプがらみのシステムのほうがマシだった。買い替え誘惑に駆られることもなく、とっとと帰途についたのは言うまでもない。

 メーカーが手抜き設計をしているとは思えないが、ハイエンドを名乗るには少々気が抜ける。ネット上でハイエンド害悪論が流れているのも宜なるかなとの感を強くした。セッティング条件が良くないとか、電源の質が悪いなど、催事場の条件の不利もあるだろうが、そういうものを越えて魅力的な音を出すからこそ「ハイエンド」ではないのだろうか。「弘法筆を選ばず」である。

 客層も高齢男性がほとんど。高齢女性を宝飾店に誘導する懸賞バスツアーの男性版を彷彿とさせるような会場の様子でもあった。PC音源や圧縮音源しか知らない若者たちに、「お前らの聞いてる音なんて、ただのまがい物だ。本物とはこういうものだ、覚えて帰れ!」と啖呵を切れるようなデモンストレーションとは言えなかった。

 これでは若者も貧乏なおじさんも、この世界からは背を向ける。

 今回のハイエンドオーディオには夢がなかった。
 夢のない世界に道楽は生きられない。