夏映画2016年09月12日 22:39

 今年の夏映画は、どうやら「シン・ゴジラ」が稼ぎ頭、夏から秋にかけては「君の名は」がダークホース的大ヒットとなりそうだという。

 ダークホースは、ある意味失うものが何もない状態からのスタートなので、身軽に、自由に制作できる部分が多いだろう。

 だが、「シン・ゴジラ」のように、過去30作にまとわりついた手枷足枷、妙なしがらみや観客の先入観、おまけにこれまで「子ども」を意識するあまり、無節操な「子供だまし」を連発してしまったゴジラ映画でヒットを飛ばすのは、ある意味大変だっただろう。

 「子供だまし」を喜ぶ観客もいる。ゴジラは「子供だまし」であることに意義があると考える観客もいる。そんな観客からは「シン・ゴジラ」は確かに酷評を受けるだろう。だが、「子供だまし」の部分をぶち壊し、そのことで背を向ける従来の観客以上の新しい観客を、「シン・ゴジラ」は生み出すことに成功した。世阿弥ではないが、「見巧者」に認められることで、作品は一皮むけたといえよう。興行は送りてと見る側の共同作業だ。どちらが「拙者」でも、作品はそっぽを向かれる。

 鳴り物入りのハリウッド実写は、その殆どが続編だが、興行は軒並みダウン。ただ、この国ではシリアスなハリウッド実写映画も、プロモーション段階で、起用された芸人の作品とは乖離した、寒々とした「芸」らしきものでCMしたがっている。作品の世界を伝えるのではなく、日頃おちゃらけた言動を売りにしている人物が、ただのノリでCMをしている。正直言って、せっかくの作品を宣伝するのではなく、ぶち壊している。それぐらいなら「シン・ゴジラ」のように、一切秘密主義の方がよほどマシである。