kind of blue アナログとデジタル2016年10月30日 22:35

 先日購入したデアゴスティーニのジャズ・LPレコード・コレクションだが、第一弾のkind of blueのアナログディスクの評判が、ネット上では芳しくない。果たしてどんなものだろうか、ひとつ試してみることにした。

 Amazonで同じタイトルのCDをチェック。1000円ちょっとの一般的なCDを入手し、同一アンプ(6SL7GTパラで807シングルをドライブするパワーアンプ+6AV11のSRPP+カソードフォロワのプリアンプ)とB&W803スピーカで再生比較。

 アナログはYAMAHAのGT-2000にカートリッジはaudiotechnicaのAT-33MLOCC、MCトランスはルンダールの廉価トランス、イコライザはaudiotechinicaの廉価イコライザ(パーツ・オペアンプ交換改造)。
 CDはmarantzのCD5000の同軸デジタル出力からPioneerのDAT、D-HS5をDACモードで受け、96kHz/16itのレガートリンク・コンバージョンで20kHz以上を創生付加した状態での我が家での標準再生方式。

 アナログ版は上下方向の広がりが広く、ベースも高めの位置に定位し、タイトだがボディのある音。サックスもトランペットもピアノもドラムスもベースも、よく分離してクリアに聞こえる。さほど不満を感じる音質ではない。高めの音像定位はAT-33MLOCCの個性でもあるが、レガートリンク・コンバージョンでも同様の傾向を示すので、特筆するまでもないだろう。
 一方、CDは定位が低めに決まる。ベースもアナログより低めに定位し、けっこうゴリッとした感じの音になっている。特徴的なのは各楽器の際立ち具合。サックスもトランペットもピアノも、ぐっと前に浮き上がってくるような再生になっている。これに比べればアナログ盤は取り澄まして奥行き感が薄い再生音だ。ジャズの特性から考えれば、CDのほうがより向いていると感じる。

 しかし、考えてみれば、分解能を高く、すべての帯域を整えて美しく鳴らす変わり、パワーや肉感的な音が苦手というのが、かつてのCDの音質の典型的な形容だったはず。一方、帯域の広さや分離はデジタルに比べて難しいが、音のボディがしっかりしているのがアナログの特徴だとよく言われている。今回はこれが全く逆の結果になっている。

 おそらく、アナログ盤はCD以降の音質傾向に合わせ、逆にCDはアナログ時代の音に合わせてリマスタリングされ直しているのだろう。つまり、音の傾向は今やデバイスではなく、リマスタリングによって大きく左右されているということだ。アナログだからこんな音、デジタルだからこんな音という単純なお話は通用しなくなっているのではないだろうか。

 もちろん、プアな再生環境ではこの差が確認できないかもしれない。また、デバイスの持つ気分的なものもリスナーには影響を与えるだろう。何より、アナログはカートリッジを変えることで簡単に音を変えることができる。今回は高解像度の高級カートリッジより、むしろやんちゃで元気のいい安価なMM型カートリッジのほうがアナログっぽくなったのかもしれない。

 要は趣味の世界。CDで気軽にパワフルな演奏を聞くもよし、じっくりと味わいつくすようにアナログで攻めて気に入った音を引き出すもよし。お楽しみの選択肢、つまり自由度は大きい方がより豊かだ。あれは良くない、これはつまらないと排除するのは経済的にはありがたいかもしれないが、道楽は所詮無駄づかい。無駄遣いのできる範囲で、無駄遣いのの豊かさを満喫できるほうが、本当に「豊か」と言えるだろう。久々に楽しいひとときだった。

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