「チャイルド44」読了2017年01月26日 22:50

 トム・ロブ・スミスの「チャイルド44」を読了。

 スターリン統治下の恐怖政治体制のソ連で、子供ばかりを狙う連続猟奇殺人事件が発生する。ところが、共産主義理想社会を標榜するソ連の国家システムは、犯罪そのものの存在を否定しており、捜査はまともに着手すらされていない。

 そんな中、一人の国家保安局員が、罠にはめられ、追い落とされ、家族や多くの人々を危機に巻き込みながら、何度も生命の危機に瀕しながら、一歩一歩犯人を追い詰めていく。そして、その犯人と主人公との間には…

 悲劇の連鎖はとめどなく、しかしどこかで必ずそこから抜け出せるきっかけがある。その一縷の希望を求めて登場人物は生きている。ラストは少々甘さも感じるが、体制が大きく変わったタイミングであれば、そういうこともいかにもありそうと思わせる。

 1980年代を中心に、50人以上の人間を殺害した実在の旧ソ連の連続殺人犯、アンドレイ・チカチーロの事件が下敷きになっているが、小説は舞台を1950年代、スターリン時代末期からフルシチョフ体制創成期に置き換えているが、これが功を奏している上に、謎を解く大きな鍵ともなっている。

 新潮文庫では上下2巻。早川や創元あたりなら1巻本と言ったところか。ストレスを感じることもなく(いや、ストーリーはかなりヘビーなので、その意味でのストレスやサスペンスは十分ある)、読みやすい。