ハリウッド映画不振2017年09月06日 23:58

 今年の夏のハリウッド映画は不振だという。

 たしかに、トム・クルーズを引きずりだしたわりに、評判が聞こえてこない「ザ・マミー」、これまた影が薄い「トランスフォーマー」など、これまで収益が見込めていたスターやフランチャイズが振るわない。「パイレーツ・オブ・カリビアン」ですら、威光が薄れたという感じだ。

 一節にはケーブルTVや配信番組にスタッフや人材、予算を食われたとも言われているらしい。そんな時に槍玉に上がるのは決まって「ゲーム・オブ・スローンズ」ということになる。確かに、潤沢な予算、重厚なドラマ、TVであることからたっぷりと使える上映時間など、優れた点は多々ある。

 だが、そんなことがハリウッド映画の凋落の原因と言えるのか。

 すでにハリウッド映画はクリエイターのものではなく、投資家の投資素材と堕している。売れると思われる続編もの、売れると思われるスターに、投資することで利益を求めることが最優先。そこにいつしか観客は忘れ去られていたのではないか。たしかにここ数年、80年代のように魅力的な新作が次から次へと生み出されたような感覚はついぞない。映画館(それもすでにシネコンばかり)に家族を連れて行って、結局見たい映画など一本もなく、駐車場の車の中で本を読んだことも一度や二度ではない。もっともこれは日本映画もハリウッド映画も同様だ。

 一方で良質な作品にも客足は遠のいてしまい、上映期間もとっとと短縮されて見逃すことも多い。「メッセージ」など、優れた作品だが、すでに観客はそんな映画を観る鑑賞力さえ失っている。単館映画に若者が押し寄せた80年台とは隔世の感がある。

 ハリウッド映画はすでにここ20年以上凋落し続けていたに過ぎない。そしてそれは、高校生の恋愛ごっこばかりにうつつを抜かした作品を連発している日本映画も同様だ。「関ヶ原」が気を吐いたのがまだ救いか。

 こんな不毛な投資営業で凋落しているハリウッド映画を脇目に、様々な国が素晴らしい映画を生み出している。それらのほとんどはシネコンではなく、BSや配信で放送されている。次はシネコンの凋落につながらねばよいが。もはや遠のく客足をポルノで引き止めるといった70年台の戦略すら使えない世の中、映画館自体の凋落も、すでに始まっているように思えてならない。よい映画あっての、そしてよい観客あっての映画館なのだから。