「靴をなくした天使」を観る2018年05月23日 23:55

 「靴をなくした天使」を観る。

 マスコミが偶像を作り、その偶像を人々は信じる。それが真実であるかどうかは無関係だ。人は自分の信じたいものしか信じようとはしない。そんな皮肉な現実を、サラッとスマートに、時にくすぐりを入れて痛烈に指摘したのがこの作品だ。

 ダスティン・ホフマンはさすがの存在感。「魔が差して」大勢の人命を救助してしまい、その事実を主張しても、普段の行いが悪いので誰も信じてくれない。小柄でひょこひょこ歩く姿は、憎めない皮肉屋の小悪党の具現化そのものだ。

 一方、ホフマンの手柄をひょんな事で横取りしてしまうのがアンディ・ガルシア。ホームレスのむさ苦しい姿から、後半はオールバックのいつものスタイルに。「魔が差して」詐欺を働いてしまった聖人君子のような人間と、これもまたはまり役と言っていいだろう。

 ラスト近く、ホフマンが息子に向かって言うセリフ。「どうせ世の中に真実なんかない。みんな嘘っぱちだ。だからお前が一番気に入った嘘を信じればいい。」マスコミや情報社会を痛烈に揶揄するこの一言の鋭さ。