「アウトロー」を観る2018年06月03日 22:59

 クリント・イーストウッドの「アウトロー」を観る。

 北軍の腐敗した軍人に家族を殺された農夫が、銃の腕を磨き、復讐の鬼と化し、レジスタンスとともに戦い…となると、なんとも殺伐とした話になりそうだが、そうならないのがなんとも不思議な作品だ。

 復讐の道中でひょんなことから助けた先住民の女と老人と道連れになり、その後も道連れは増え、やがては小さな農場にファミリー的に住み始め、復讐の鬼もしだい連れに毒気を抜かれ、ユーモアが作品に流れ始めるにつれて丸くなり、先住民とは共存の道を求めるようになる。

 もちろん最後には復讐を遂げる戦いが待っているのだが、この作品は単なる西部劇ではなく、理不尽な暴力に対する抵抗や怒り、ともに生きる相手を尊重し、敬意を持って接する重要さ、弱いもの、強いたげられたものへの共感と愛情に軸足がある。それを体現する主人公のヒーロー像は、マカロニ・ウェスタンのイーストウッドというより、ダーティハリーのそれに近いようにも感じた。

 アメリカの理想のヒーロー像とでも言おうか。エンタテインメント性も十分で、西部劇に馴染みがない人でも楽しめそうだ。