「深夜の告白」を観る2018年08月07日 23:46

 「深夜の告白」を観る。

 監督は名匠ビリー・ワイルダー。脚本はビリー・ワイルダーとレイモンド・チャンドラー(もっとも執筆はかなり険悪なムードであったらしい)。

 夫の保険金殺人を目論む美しい後妻フィリスと、その片棒を担ぐ優秀な保険セールスマン、ネフ。犯人は最初からわかっているが、それを暴いていくのは保険調査員でネフの友人、キーズ。物語は全てのできごとが終わり、ネフが深夜のオフィスでディクタフォン(今で言う録音機)に全ての告白を録音するシーンから始まる。

 1944年制作のこの作品は、フィルム・ノワールの先駆とも呼ばれ、またフィリスは美しい悪女、ファム・ファタールの古典的キャラクターとされている。暗く重い雰囲気、抑えた音楽、夫が死んでも全く動じない上に、過去にも殺人を犯しているらしいフィリスの破滅、そして完全犯罪を企てながら、良心の呵責や不安、フィリスの裏切りに対する怒り、最後に見せる温情と破滅、フィルム・ノワールの全ての要素がきちんと収まっている。ラストには男同士のやるせない友情と、ほぼ完璧と言っていいほどの作品。

 娯楽を求めて観る作品ではないが、もっと高く評価されてもいいのではないかと思える作品。