「フランケンシュタイン」を観る2019年12月30日 23:04

 1931年制作の映画「フランケンシュタイン」を観る。

 タイトルロールでこそ「?」とクレジットされているが、ボリス・カーロフが怪物を演じた作品だ。フランケンシュタインの怪物といえば、真っ先にあの首にボルトの刺さった姿が思い浮かぶが、それはこの作品に端を発している。

 ホラーとしては大時代的で、今の目から見れば大したことはないが、20世紀初頭のヨーロッパの古き良き時代のイメージはよく伝わってくる。近代科学が破壊しようとしているこれまでの秩序と、その破壊によって生み出された制御不能の脅威、そして最後には旧秩序の象徴とも言える、老フランケンシュタイン男爵のなんともとぼけた、粋な締め。科学の暴走への恐怖と、それ以前の世界に対する保守的な信頼がこの作品の世界観だ。

 少女と戯れる怪物のなんとも嬉しそうな笑顔、与えられた知力の制御を超えた力を持つがゆえに起こしたその直後の悲劇。怪物がなぜ生みの親に近付こうとするのかがはっきり描かれていないのだが、それでも少女とのエピソードがこの怪物のもつ純真さを際立たせ、哀しみを背負わせる。