「スターリンの葬送狂騒曲」を観る2020年08月19日 10:19

 「スターリンの葬送狂騒曲」を観る。
 
 2017年の英・仏合作映画。内容から考えて、ロシアが絡む可能性は…まずないだろうと納得。

 スターリンの死には毒殺説など、いまだ諸説あって、定かではないようだ。そこにワンアイディアを持ち込んで、毒殺説を否定しつつ、硬直しきった恐怖政治が結局はスターリンの息の根を止めたと取られる描写となっている。恐怖政治は硬直化と責任回避(無責任)をはびこらせる結果となる。それが不謹慎ながら滑稽な言動を生み続ける。文字通り死ぬほど怖い世界なのに、それがどこか滑稽なものを生んでいる。恐怖を突き抜けた歪んだ笑い、まさに「ブラックコメディ」そのものだ。

 ドラマなので、当然史実の流れをくみながら、史実とは離れた描写が多々ある。ドキュメンタリーではないのだから、そこを突くのはお門違い。本質として描かれている権力闘争の醜さ、虚しさ、バカバカしさは十分伝わる。悪役となるベリヤ(ちなみに劇中で暴露される悪行は実際にベリヤが行ったものである)も、主人公格のフルシチョフも、みんなどこか悪いやつばかり。ラストシーンではフルシチョフの斜め後ろに眉の濃い若者が…

 みんな言ってしまえば小悪人。そんな小悪人が国を牛耳る恐怖。粛清と秘密主義と恐怖政治で自滅していったソ連だが、それは政治体制の問題だけではない。現代の世界がこの映画を、ソ連の崩壊を笑えるのだろうか。