「リトル・ビッグ・ファーム 理想の暮らしのつくり方」を観る2021年03月16日 23:08

 「リトル・ビッグ・ファーム 理想の暮らしのつくり方」を観る。

 ロサンゼルス郊外に実際に存在する「アプリコット・レーン・ファーム」。200エーカーの広大な農園は、しかし、完全に荒れ果てていた。

 そこに、殺処分寸前の黒犬を引き取った夫婦がひょんなことからやってくることになる。夫はジョン。野生生物関係の番組を制作したカメラマンであり、監督でもある。妻はモリー。料理家で、有機栽培農法で作られた食材を理想と考えている。

 ジョン夫婦は荒れ果てた「アプリコット・レーン・ファーム」を理想の「生態系」を保持した農園へと再生しようとする。その8年間にわたるドキュメンタリーがこの作品だ。もちろん監督はジョン。

 野生生物番組のノウハウはこの作品に存分に現れている。植物も動物も、虫も鳥も、息を呑むほどに美しい。そしてその自然をじっくりと見つめ、正面から受け止めているのが画像から伝わってくる。そのスタンスこそがジョン夫婦のこの農園との関わり方となっている。

 シャベルも刺さらないほどの痩せて荒れた土地を、少しずつ肥沃な大地に。指導者の早すぎる死に見舞われ、害虫や害獣に悩まされ、苦悩し、挫折し、それでも自然を真摯に見つめ、自然の摂理から学び、問題を解決して、ひとつひとつ課題をクリアしていく。課題がクリアすればまた新しい課題…しかし、自然は努力するものには幸運も与えてくれる。

 説教も過大な演出もめでたしめでたしもなし。ただ自然と農園を見つめる。それだけで十分作品として成立している。人が自然と共生するのは今や簡単ではないけれども、努力することはできる。そして映画が終わっても、アプリコット・レーン・ファームの日々は続いている。ラストのクレジットにある通り。