「ショック療法」を観る2021年05月05日 10:52

 「ショック療法」を観る。1973年のフランス映画。

 管見にしてこの作品の存在も知らなかった。往年の二枚目、アラン・ドロン主演だが、どうやら公開時はかれのヌードシーンが売り物にされていたらしい。もちろん当時の映倫だから、スクリーンはボケボケだっただろう。

 フランス映画での女優の脱ぎっぷりとそのあっけらかんとした健康的な所作は、はっきり言って(よほどそういう年頃か、よほどそういう気分でないかぎり)いやらしさを感じない。ただもう美しい。「これが裸一貫、人間の本当の姿ですが、それが何か?」と主張するようなヌードにわざわざぼかしを入れて「いやらしいから隠しますよ」というのは、むしろ規制する側の「よほどそういう年頃か気分」をさらけ出すようだと思うが、まあ、「そういう年頃か気分」の御仁も映画を観るだろうから(そしてネット社会ではそういう御仁も大声で主張できるからますます)、やむを得ない仕儀か。

 件のヌードシーンは、老いを感じはじめた男女が「エイジレス療法」で若さを取り戻し、生と若さの喜びを謳歌するシーンであって、これがないとこの作品の本当の恐ろしさには響かない。

 問題の「エイジレス療法」というのがとんでもないもので、これを主導するのがアラン・ドロン演じるデビレ医師。二枚目が悪魔的存在を演じるのは今でこそよくあることだが(アニメでさえ「美形悪役」が注目されて久しい)、さすが二枚目俳優。実に怖い。たまに顔を出すぶっ飛び具合、女好きも悪魔的だ。

 そして、この作品は「貧しいものを搾取して豊かさを謳歌する富裕層」に対する告発の隠喩でもある。公開当時は単なるサスペンスだったのだろうが、現代では決して洒落にならない話となっている。

 ドロンのヌード騒ぎ、今の目から見てもちゃちなSFX、B級レベルのストーリー運びと、作品のテーマに宣伝も映像も釣り合わないもどかしさは確かにある。だが、このアイディアで10年後にジェイムズ・キャメロンあたりが撮ったらどうなっただろうか。そんなことを思わせるような…しかしそれではこのいかにもフランス映画っぽい雰囲気は失われてしまうか…