「あの夜、マイアミで」を観る2021年05月16日 16:58

 「あの夜、マイアミで」を観る。2020年のアメリカ映画。レジーナ・キング初監督作品で、amazonが制作した映画だ。

 1964年、プロボクサーのカシアス・クレイがヘビー級の世界チャンピオンとなった。その夜、彼の友人マルコムX、ジム・ブラウン、サム・クックがマイアミのドライブインに集まって、プライベートで祝杯をあげようとしていた。その夜の4人の会話はいつしか自分たちが置かれた黒人差別の実態や公民権運動へと移っていって…

 もとは舞台劇であったものを映画化した作品。今の興行成績優先のアメリカ映画界では資金が下りないのではないだろうか。ハッピーエンドを基本としながら、いろんな社会問題を入れ込んで佳作を生み出したアメリカ映画は、50年台のテレビの台頭とマッカーシズムでガタガタとなった。そこに60年代末からベトナム反戦の風潮もあってアメリカン・ニューシネマが生み出され、アメリカ映画の豊穣さを支えることとなった。

 70年代後半からは娯楽性と作品性を兼ね備えた傑作を多く生んだアメリカ映画だが、映画の投資対象化と予算の増大によって先細りの状態に陥っている。そこに風穴を開けるかもしれないのが、NetflixやAmazonといった新規配信企業の映画作品制作だ。スクリーンに掛けることこそ少ないが、映画作品としての手抜きはない。

 この作品のように、派手さはないが良質な作品(そういう作品が儲かるとは限らない。良薬は口に苦く、豊かになった人間は苦い薬を敬遠する)にとって、配信企業のサポートはあるべきだろう。

 Amazonのレビューサイトにはかなり的はずれなマイナスコメントが見られるが、もともとAmazonのレビューのクオリティのレベルからして、あまり気にするほどのことはないだろう。第一プライム会員なら追い金なしなのだから、料金返せと腹が立つほどのことはない。余命数時間などということもないのだから、わずか2時間(それも劇場とちがって、途中休憩や日またぎ視聴も可能)に目くじらを立てる必要もない。

 いい作品だ。4人のこの作品の後の運命も暗示されているので、史実を知っていればさらに楽しめる。

 ちなみに、ここでは世界チャンピオンを「カシアス・クレイ」と表記しているが、これはこの作品に準じたもの。この作品が描いている一夜の後、彼は「モハメド・アリ」と改名している。