「ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK」を観る2022年01月25日 20:27

 「ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK」を観る。

 ザ・ビートルズは全てにおいて前例のない存在だった。そして既存の社会はその存在を見くびり、そして対応しきれなかった。

 それまでにない熱狂、ファンの数、警備の不備、会場の不備…数万人を収容するスタジアムでないとコンサートが危険で開催できないなどということを、60年代の社会は想定できていなかった。

 人種や宗教を越えて共通の音楽を楽しむという考え方もまた60年代には共有されていなかった。公民権運動が盛り上がり、政治的に揺れるアメリカで、ザ・ビートルズの4人はナチュラルに人種差別を否定していく。

 PAもせいぜい100W。スタジアムでは観客に音も満足に聞こえない。姿もほとんど見えない。演奏している本人たちでさえ、自分たちの音が聞こえていない。移動は安全を考えて護送車のような車。観客は自分たちの音楽ではなく、単なる記号として「ザ・ビートルズ」を捉えているに過ぎない。そう感じた時、彼らがコンサートから身を引くのは痛いほど理解できる。

 数万人を動員し、スタジアムでコンサートを開くアーティストは、コロナ禍以前、珍しくなくなっていた。そんな時代を切り開き、そんな時代が当たり前になる前に解散したザ・ビートルズだが、彼らが愛し、生み出し続けた音楽は今でも残っている。

 「Help!」が某番組のテーマソングとして流れて久しいが、この映画を見るとあの曲が心の底からのSOSであることもよくわかる。

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