ユジャ・ワンのショパン・スクリャービン・リストを聴く2022年02月11日 16:34

 ユジャ・ワンが演奏したショパン・スクリャービン・リスト・リゲティのエチュードとソナタ集を聴く。

 パワーとテクニックはすごい。ガンガンと攻め込むような音、畳み掛けるようなテンポ、息もつかせぬほどの演奏で、世評が高いのもよくわかる。どうだと言わんばかりの演奏テクニックには圧倒されてしまう。

 だが、聴いていて、どこか心がすうっと演奏から離れていく。こういうテクニックでぐいぐい押すタイプの演奏は嫌いではない。ハイフェッツもクライバーも、アシュケナージもこういうタイプの演奏家だったし、ポリーニもそうだ。ところが、この演奏(録音)には、なんとなく反りが合わない。演奏に入り込むというより、演奏の圧力がこちらの侵入を許してくれていないように思える。

 世評の高い名演奏家の演奏には、他にも何人か、どうしても自分と反りの合わない人がいる(筆頭はバレンボイム)。今のところ、ユジャ・ワンもその中に入ってしまっているようだ。

 もっとも、歳とともに、環境とともに好みは変わるもの。せっかちに袂を分かつより、しばらくは世評の高さを腑に落とすように聴き込んでみようとも思う。