民主主義の否定?2022年07月15日 20:26

 先日の殺人事件は、選挙直前に政治家が殺害されたわけだが、それを暴力による政治活動の否定とか、民主主義の否定と捉えたステートメントが多数発信されている。相手が政治家だからそういう側面も皆無とはいえないのだが、日を追うに従って違和感が高まってくる。

 この事件は報道によるとどうやら政治的意図をもって行われた犯行ではない。それは事件当初より報道されていたが、どうやら被害者の「脇の甘さ」が引き金となった逆恨みのような動機が明らかになっている。この動機の真偽もまだ不明確ではあるが、この線で考えると、今回の犯行の遠因には被害者に目立った公私混同的な言動や利権に対する前時代的鷹揚さがあるように思えてならない。もしそうなら、これは民主主義の否定どころか、不適切な権力行使に対する怨恨ともとれてしまう。

 それを民主主義の否定と読み替え、殉教者のごとく扱うのはどう考えても腑に落ちない。むしろ権力を持つ立場にあるすべての人に猛省を促す事件ではないのだろうか。

 犠牲者を悼むことに抵抗はない。だが、生者の都合で死の意味を読み替えるのはいかがなものか。毎度ガンダムネタで(実は私はガンダムが好きではない)いささか辟易するが、シャアから「坊やだからさ」と鼻で笑われたガルマ・ザビの戦死を、ジオン公国の「国葬」として戦意高揚に利用したギレン・ザビのエピソードが頭をよぎる。

「ザ・バンド かつて僕らは兄弟だった」を観る2022年07月26日 20:41

 「ザ・バンド かつて僕らは兄弟だった」を観る。2019年のアメリカ・カナダ合作映画。

 ザ・バンドの結成と解散にいたるストーリーを描いた作品。バンドメンバーの仲違いによる決裂がザ・バンドを解散させた(後に再結成したときもしこりが残っている)わけだが、その当事者の一人であるロビー・ロバートソンの書いた本をもとに作られたドキュメンタリー映画。

 当然ながら、ロバートソンの見方がメインになっているので、確執の相手であるリヴォン・ヘルム(すでに故人)の見方はこの作品に反映されてはいない。そこが気に入らない向きもあるようだが、だからといってこの作品の価値が大きく減じられることはない。

 ボブ・ディランとの苦しかったツアーや、成功の陰でのトラブル、そして解散コンサート「ラスト・ワルツ」のそうそうたるメンバーの映像を観るだけでも価値はあるというもの。

 スコセッシが監修した「ラスト・ワルツ」も観たくなった。