「ヒトラー~最期の12日間~ 」を観る2022年11月21日 20:55

 「ヒトラー~最期の12日間~ 」を観る。2004年のドイツ・イタリア合作映画、オリヴァー・ヒルシュビーゲル監督作品。

 ネット上ではネタ扱いされていることでも有名だが、作品自体は硬派そのもの。ネタとは切り離して観るほうがいいだろう。

 ヒトラーの最期の12日間というタイトルそのもの。次第に常軌を逸した作戦に固執して、傍から見ても狂気にとらわれているとしか思えないヒトラーを熱演したのは名優、ブルーノ・ガンツ。ナチスの中での内部抗争や狂気をこれでもかと、しかし声高にならずに描いていく。155分の長尺もあっという間といった感じで弛緩することなく乗り切っていくのも見事。

 ナチズムが狂気に走っているのは現代の冷静な視点からすれば当然なのだが、ナチズムのない世界には生きられないとまで言い放つゲッペルス夫人、不安のあまり享楽的な行動に走るエヴァ・ブラウン、そしてこの物語の語り部であり、実際にこの作品の製作時にも存命だったヒトラーの秘書のユンゲのどこか醒めたような、狂乱にも盲信にも属さない姿。極悪非道と思われるヒトラーやゲッペルスらの家族や子供、女性に対する愛情など、紋切り型の善悪を超えた陰影のある人々の描かれ方が素晴らしく、また、恐ろしい。ハンナ・アーレントの全体主義分析や、最近文庫化された「普通の人びと」にもつながる、誰にでも潜んでいる狂気がじわじわと伝わってくる。

 ラストで、実際のユンゲのインタビューが映し出される。そこに希望と祈りのようなものを感じてしまう。

 この作品がただのネタで終わっていいはずはない。なのにこの作品がネタとされるのもまた人の存在の複雑さの表れなのか。