「黒線地帯」を観る2023年01月25日 17:26

 「黒線地帯」を観る。1960年の日本映画。監督は石井輝男。主演は天地茂、三原葉子。

 ハンサムでちょっと危なげ、カミソリのような鋭さ。天知茂のイメージといえばこんな感じ。ソフィストケートされた明智小五郎というはまり役もあったが、この作品ではもっと若くて奥手で真面目なトップ屋(これも死語か…フリーで特ダネを追うジャーナリストのこと)。

 売春禁止法で売春が地下に潜り、麻薬や犯罪組織と繋がり始めた時代、そんな社会の暗部を抉り出そうと奮闘する主人公町田だが、組織の罠にはまり、女性殺しの濡れ衣を着せられてしまう。八方塞がりの彼は身の潔白を証明するために更に組織へと接近していく。そんな中で出会ったのが、悪女なのにどこか憎めない摩耶という女。友人のトップ屋からも追われた町田は、なんとか48時間友人の告発を待ってもらう交渉に成功。そして…

 細かいところは少々不自然でもお構いなしにぶっ飛ばすスピード感がすごい。わずか90分足らずで定番のストーリーをきちんとまとめてしまう。途中、かなり図々しくて向こう見ずな女学生役で登場するのが後の昼メロの女王、三ツ矢歌子というのも驚き。モダンジャズ系のスピード感あふれる音楽は渡辺宙明。キカイダー(実写版)や戦隊もの、そしてあの「マジンガーZ」を手掛けた作曲家。今にして思えば豪華なスタッフだ。

 50年代末から60年代初頭のちょっといかがわしくて猥雑な街の空気も今の目から見れば新鮮。