脅迫ビジネス2023年06月10日 21:44

 懐かしさを感じるほどの曲の一節。

  弱い者たちが夕暮れ
  さらに弱いものを叩く

 ネットの匿名性をバックに、気に入らないもの、腹の立つものを叩きまくった脅迫者がいる。匿名の支持者という権力が正義の美名のもとに、薄汚い言葉と威圧とで公然と全世界に共時的に公開されるメディアで暴言を発し、脅迫を行う。

 都合が悪くなると、法の手が届かないところに逃げる。世界中どこにいても、匿名の支持者とはネットでつながっている。つまり権力が担保されている。

 身の丈に合わない権力を持てば、人間はあっという間に腐敗する。腐臭を撒き散らしながら、自分の鼻はすっかりその匂いに麻痺している。かつては文才が、画才が、楽才がなければ行使できなかった権力が、いまはお手軽に誰でもどこでも、ネット環境さえあれば行使できる。

 社会的立場など簡単に覆せる。数を頼みに押し切ればいい。社会的立場の逆転した状況は暴力革命の場合と同じだ。それまでの社会的に高い地位にあった層を、大衆が袋叩きにする。まさに弱いものたちが、さらに弱いものになった人々を袋叩きにする。

 鼻持ちならない連中がふんぞり返っているではないかという声も聞こえてきそうだが、社会的地位が高いからと言ってみんながみんな鼻持ちならないわけではないし、大衆がみんな善良だなどとはとても言えない。大衆が担ぎ上げた人物がどれほど無責任に他人を脅迫したか、そしてそれをビジネスにしたか、それを考えれば人のことなど言えた義理ではなかろう。

  いい奴ばかりじゃないけど
  悪い奴ばかりでもない

 報道で目につくのは常に分子。悪い奴ばかりでもない「分母」が大きく、力強くあってほしい。