「原爆下のアメリカ」を観る2023年08月08日 20:50

 「原爆下のアメリカ」を観る。原題は "Invasion U.S.A."、1952年のアメリカ映画。

 マッカーシズムの渦中に作られたB級映画となれば、ガチガチの反共プロパガンダ映画となるのも当然。プロパガンダ映画の金字塔といえばあの有名な「カサブランカ」だが、あれは恋愛映画としてもハードボイルドとダンディズムの世界を描いた作品としてもサマになっている。こちらは如何せん、お粗末としか言いようがない。

 とにかく原爆を落としまくりだ。アメリカにも十数発、敵国(おそらく共産圏)には報復にそれ以上。放射能汚染についてはセリフ一言。核兵器をナメてかかっているにもほどがある。ニューヨークも核攻撃を受けるという設定だが、通常爆弾よりもチャチな破壊。

 とはいえ、技術的な問題はあったのかもしれない。初代ゴジラが東京をさまよい歩き、破壊の限りを尽くしたのは2年後の1954年。我々はゴジラ上陸後の東京の惨禍が東京大空襲やヒロシマ・ナガサキの惨状を彷彿とさせる、リアルと地続きのものであることを感じているが、この作品の中にもある通り、100年以上本土を他国が攻撃したことがなかったアメリカ(真珠湾はハワイ島。本土への敵性勢力の攻撃は9.11が初)に、本土破壊の映像のリアリティは当時はあの程度にすぎなかったのだろう。

 キューバ危機よりも前、核に対する認識はとてつもなく甘かったことがよく判る。核の恐怖より共産圏による社会秩序の破壊のほうが怖かった、その恐怖から力で目を背けようとしていたアメリカの空気が伝わってくる。そして、自国が使用した核兵器が生み出した惨状を(未だに)自国民にきちんと伝えようとしないアメリカの暗部も見えてくる。情報操作でロシアを指弾するどころではなさそうだ(もちろん指弾はしなくてはならないが、同時に自身も指弾しなくては)。

 オチに至っては脱力モノ。SF映画のカテゴリに入れる風潮もあるようだが、あのオチではとてもSFとは言えない。しかし、アメリカ人がこの作品のようなプロパガンダを未だに引きずっているのではないかと不安にもなる。