「アルゴ」を観る2022年05月30日 23:40

 「アルゴ」を観る。2012年のアメリカ映画。もう10年も前の映画になるのかと、少々驚いている。

 イラン革命で在イランアメリカ大使館が占拠され、52人が人質となった事件で、選挙直前に大使館を脱出した6人のアメリカ人を奪回するために、CIAが採った作戦を描いている。救出当時はこの作戦は極秘扱いで、脱出はカナダの尽力であったと公表された。クリントン政権で1997年にはじめて公表されたのがこの映画のもととなった事実となる。

 当然映画なのだから、事実そのものではない。映画作品としては申し分のない、王道を行くサスペンス映画となっている。

 ただ、この事件を引き起こしたアメリカの政策のことを考えると、脳天気にこの作品を観るのは抵抗があることも確かだ。アメリカの中東政策や中南米政策の根本には、白人至上主義と人種差別思想がとぐろを巻いているように思えてならないし、その暗黒面が今のアメリカの闇そのものとつながっていると言っていいだろう。この映画の主人公は、いわばその尻拭いを、無名の存在として命がけで務めていたということになる(結果的に機密解除によって事実は公表されたが、そうでなければ真相は藪の中のまま)。

 題材が題材だけに、手放しで面白がることが出来ないのが歯がゆい限り。ちなみに作戦のためにでっち上げられた映画「アルゴ」は、どうやらロジャー・ゼラズニイの名作「光の王」をベースにした作品だったらしい。当然どうしようもない「ダメ映画」だったのだろうが、もし制作が実現されたなら、どんな「トンデモ」映画になったのか…そして「光の王」が「アルゴ」以上の名作として映画化されたならどうなるだろうか…そっちの方も気になる。