crowfield blog

　「人類遺産」を観る。2016年、オーストリア・ドイツ・スイス合作のドキュメンタリー映画。ニコラウス・ゲイハルター監督作品。

　人間は一人も登場しない。音楽もない。もちろんセリフもない。ただひたすら「廃墟」を映し出す。

　日本では原発事故で人のいなくなった福島の街、軍艦島、その他の国でも閉鎖されたテーマパークや映画館、水没した後、旱魃で再び姿を表した街、朽ち果てた教会、打ち捨てられたオフィスや病院…

　雨の音、虫の羽音、風の音…94分間、ただひたすら人が去った後の廃墟、夢のあと、日常を失った街。静かにそれがただ映し出され、最後には吹雪の中にホワイトアウトしていく。

　すべての受け止めは観る側に委ねられる。静寂と廃墟独特のなんともいえない雰囲気がいい。ただ、疲れている時や、布団の中でぬくぬくと寝っ転がりながらタブレットで、あるいはこたつの中で横になりながら鑑賞となると、中盤以降途端に睡魔に襲われること必定。