「映画を早送りで観る人たち」を読む2023年05月06日 21:38

 「映画を早送りで観る人たち」を読む。

 著者は「映画を早送りで観る」ことを職業上経験し、その結果として否定的な立場に立っている。だが、この本では確かに随所に否定的な表現は並びはするが、「映画を墓贈りで観る」ことを選ばざるを得ない状況と、そこに置かれた人たち(「Z世代」と呼ばれる世代がその大半)を丁寧に、理解しようと努めている。

 「早送り視聴」を選ぶのではなく、選ばざるを得ない状況を一つ一つ丁寧に論考していて、よくありがちな上から目線のバッシングになっていない点が好ましい。そして全く同じ状況に追い込まれたら、「早送り視聴」はすべての世代に共通に発生しうること、いや、すでにそうなっているのではないかという恐れも感じた。

 今日はヨーロッパの有力国の国王戴冠式。地上波は政治・文化的に大きな意味を発信しようとしているこのイベントを放送しない。バラエティ番組の片隅にちょっぴり映した番組もあったが、音声はほとんど流されず、芸能人の小うるさい喋りと、初老のMCの「こども」でもわかる薀蓄話で覆いかぶされてしまう。すでに「その程度」でよい「コンテンツ」として「消費」されている。それについて考えるのは、連休疲れの頭にはしんどいし、はっきり言葉で教えてもらわないこと以外は各自の自由、他人がどう解釈しようと自分とは関係ないし、知ったことではない。

 こんな貧しい人間を生み出し、貧困状態に追い込んで支配しているのは一体どんな存在なのだろう。