「ザ・スクエア 思いやりの聖域」を観る2021年04月29日 23:26

 「ザ・スクエア 思いやりの聖域」を観る。
 2017年のスウェーデン映画。

 現代美術館の主任キュレーターであるクリスティアン。だが現代美術となると敷居が高いと感じるのは日本もスウェーデンも同じらしい。彼らは現代アートの公開の広報活動に頭を悩ませ、展示している作品についての集客についても頭を痛めている。

 そんなクリスティアンがひょんなことからスリの被害にあってしまう。掏られたのは財布と携帯。携帯のGPSであらかたその所在がわかり、クリスティアンは部下の悪乗りとも言えそうなアイデアに飛びついてしまう…

 そのおかげで財布と携帯は返ってきたが、クリスティアンには次々と悩ましい出来事が襲いかかり、そして最後には彼の地位まで脅かされていく…

 前編これエゴイズムのカタマリのような作品だが、ドロドロと暗い作品ではなく、コメディタッチのブラックユーモアもあって、最後まで飽きさせない。かといって説明過多では決してない。観る側もしっかり考えながら作品に付き合う必要がある。そんな観る側を置いていくようなテンポではない作品となっている。

 タイトルの「ザ・スクエア」は、作中に登場する現代アートの名前でもある。作中にもある通り、青臭いほどまっとうなメッセージを発するこの作品が全作のシンボルのように扱われている。そしてそれを取り巻く人々のなんとも自分勝手なこと。人は自分に都合のいいことしか耳に入れないし、信じないという、誰でも持っている悪い点を静かに、だが明確に暴き出している。

 ラストのクリスティアン親子の映像には何の説明もない。それがいい。
この作品を退屈と感じるなら、それはこの作品の時間に自分の思いを埋め込むことができなかったということだろう。それは作品のせいか?それとも観る側の問題か?