「レコード芸術」休刊2023年04月03日 21:38

 「レコード芸術」が7月で休刊となる。

 確かに、ここ数年そういう予感はあった。アカデミックな読み物や海外からの寄稿がなくなって久しく、名物連載も多く終わり、広告も激減、そしてなにより…薄くなった。

 海外版と国内盤に別れたレコード評も現実とはズレ始めていたし、もはやレコード(というよりCDだ)を購入する術は地方にはほぼ皆無、大都市圏でも減少中。実際に取り上げられたCDをオンラインで購入しようとしても、サブスクの配信のみということも少なくなかった。

 配信についても記事はわずかながらあったが、iTuneに偏った記事で、少なくともiTuneを使わない私にはほぼ無意味。オーディオ機器の記事も、だんだん現実味のない価格の製品ばかりが取り上げられるようになり、読者にとっては雲の上の仙人の話のようにもなっていった。今の給与体系や経済状況で一台100万円を超えた機械を複数購入してやっと音楽が聴けるようなシステムを購入できる(あるいは購入の希望が現実味をわずかでも持てる)層以外には魅力ある記事とは言えない(第一、すでにハイレゾ音源をわずか数万円でこの雑誌が紹介する製品とさほど遜色ないレベルで再生できるプレーヤーが存在することはネット上で知れ渡っている)。

 なにより「クラシック音楽」が教養ではなく、単なる消費財と化してしまったこと、オーケストラが自前で配信を始め、音源も販売し始めたことが、この雑誌のスタンスを大きく崩す原因ともなった。サブスクでどこにいても安価にお試し視聴ができて、オーケストラやミュージシャンが直接自分たちの音楽を発信する時代に、パッケージ音楽のみに絞った雑誌の存在はやはりニーズに合わなくなっているのだろう。

 CDやアナログのジャケットに取り上げられた名画と音楽との関連に注目した連載や、ウィーンでの生活を扱ったエッセイなど、面白い連載も多かった。寂しいが、時代の変化に対応できなかったということだろう。

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