ハイレゾ再生2015年05月17日 06:52

 ハイレゾ機器についての情報が次第に広がってきているようだ。

 ネット上ではもちろんだが、TVや新聞等でも取り上げられるようになってきている。

 だが、いつものこととは言え、この手の情報の裏には、産業界の販売促進の目論見が薄ら透けて見える。そして、そう言った場合、その煽動がうまく行くことはあまりないように思える。

 ハイレゾ音源はたしかに素晴らしい。しかし、その音源を、どのようなシステムで鳴らすかはともかく、どのような環境で享受するのかという視点は欠落していると思えてならない。

 現状ではハイレゾ音源はPC環境で再生することが一番手軽だ。その環境で音楽を再生する環境を想像すれば、PC回りの貧弱な再生環境で、一般の人々がハイレゾの恩恵を十分に享受するなど、困難だろう。いつもの音よりちょっときれいといった程度にとどまるのではないか。

 ネットワークプレイヤーを購入するには初期費用が必要であり、当然それ単体では再生不能だ。従来のオーディオ機器に接続するにしても、一般の人々の所有しているオーディオ機器のクオリティを考えれば、PC回りよりはマシといった程度ではなかろうか。

 TV回りのサラウンド環境にしても同じ。長引いたオーディオ不況の結果として、一般家庭にはハイレゾ音源の真価を発揮できるシステムの存在は期待できない。

 マニアやこだわりのある向きには「そんなことはない」と言われそうだが、オーディオマニアは今や少数派であり、PCからオーディオに入った層の大半は、オーディオ全盛期のノウハウをもたない。なにせアナログレコードをデジタル化する際のプレーヤやカートリッジについて一顧もすることなく、「板起こしの音はぬるい」と一括してしまうほどだ。数千円で入手できる「レコードをUSB経由でデジタル化できます」程度のプレーヤとそのカートリッジで、アナログ盤の音の真価を引き出せるとはとても思えない。

 SACDよりもmp3の方が、経済的には売れた。一般家庭はクオリティよりも簡便性を求める。重厚長大で著作権ビジネスにガチガチ、ユーザが手を入れる楽しみさえ奪われているSACDが、いかに高いクオリティを持っていようが、受け入れられるはずはなかった。音質からすればまあまあ、自分でコンピレーションを好きに作れるiPodの方が売れるのは当然の帰結だったのだろう。もちろん、SACDよりiPodの方が安価でもある。安くて、そこそこのクオリティで、ユーザが自由に楽しめる。これが一般が求めるものだ。

 マニアであれば、クオリティとコストのバランスについては非常にシビアなので、メーカーも適正な製品を生み出す。しかし、本当の普及は一般家庭に受け入れられることでしか達成されない。ハイレゾの真価がわかる、安価で簡便なシステムを生み出さない限り、ハイレゾもまたマニアのおもちゃ、忘れ去られる存在と化す。

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