ウゴルスキ逝去2023年09月07日 20:56

 アナトール・ウゴルスキが逝去。

 神童と呼ばれながら、ソ連でシェーンベルクやブーレーズといった現代音楽を演奏したため当局に睨まれ、閑職に追いやられ、ソ連崩壊後の混乱で迫害を受け、1990年にドイツの難民キャンプで紙鍵盤でしか練習ができないという苦境に沈んでいたが、たまたま存在が発見され、1991年にドイツ・グラモフォン専属となり、西側にデビューしたという、遅咲きの天才だった。

 「展覧会の絵」のラスト、キエフの大門の冒頭がクレッシェンドで始まるなど、当時の一般的な解釈とは違う、それでいて説得力のある演奏が新鮮だった。メシアンの「鳥のカタログ」は今でも名盤の誉れ高い。

 後にウゴルスキは録音活動から離れ、教育現場に身をおいたようだ。グラモフォンからも離れ、ずいぶん経ってからスクリャービン全集を発表したが、それから後の消息は伝わってこなかった。

 享年80歳。政治と時代に翻弄される波乱の障害だった。冥福を。