「ヴァインランド」読了2015年12月18日 06:56

 トマス・ピンチョンの「ヴァインランド」を読了。

 ストーリーはシンプルだが、なんとも饒舌で豊か、暴走と混沌とおふざけの心地よい混交でボリュームのある世界だ。

 生者と死者との境界すら曖昧な中で、60年台アメリカと80年台アメリカとの相克も浮き彫りになるが、深刻になることもなく、さり気なく、サブカルチャーを下敷きにした皮肉たっぷりに右傾化するアメリカを批判するスタンスが面白い。

 ラストの落ちはマジック・リアリズムも連想させられるし、エンドシーンは冒頭とリンクして円環をなしている。クレバーな設計で組み立てられた、破壊的痛快作とでも言おうか。