大野和士指揮、バルセロナ交響楽団を聴く2018年10月15日 22:17

 NHK-FMでオンエアされた大野和士指揮のバルセロナ交響楽団演奏会ライブを聴く。

 最初はチャイコフスキーのバイオリン協奏曲。冒頭からビートの強いマッチョなリズム。クラシックというより、ロックのようなビート感が聞いている側のテンションを高めていく。バイオリンは最近の主流のやや細めの音。オケもバイオリンもインテンポで丁々発止。まるでスポーツを見ているかのような爽快感がある。明朗快活、健康そのもののチャイコフスキーだ。エンディングもケレン味とまではいかないまでも、聴く側のテンションをグイグイ引っ張っていく勢いが見事。

 だが、その反面、退廃や官能といったダークでアンニュイな表現は後退する。ダークサイドがないのは、大人の音楽としては少々物足りない。やんちゃな良い子のイケイケと言った感じが終始支配する。元気にリフレッシュしたいというニーズにはぴったりだ。夜よりは朝向きの演奏。

 後半はベートーベンの第3。チャイコフスキーのようなビート感に溢れる演奏を期待したが、少々肩すかし。チャイコフスキーのような気風のよい暴れっぷりは交代してしまった。若干アゴーギグを効かせながら、さらさらと流れていく第3。トスカニーニのような強烈なアタックや、フルトヴェングラのような壮大さ、ガーディナーなどの古楽器、原点回帰インテンポの過激さも知っている耳には、優等生的な演奏に聞こえるだろう。聴衆も同じ感覚だったのか、チャイコフスキーに比べて拍手のカロリー(今はジュールというべきか)も低め。ベートーベンにはもう少しロック、またはヘビメタ調のビートと切り込みで暴れて欲しかった。とはいえ、演奏は十分楽しめる。

 どちらかを選ぶとしたら、やはりチャイコフスキーだろう。暴れっぷりの爽快さを買う。