「プラン9・フロム・アウタースペース」を観る ― 2021年12月28日 21:41
「プラン9・フロム・アウタースペース」を観る。
あの、ティム・バートンが愛してやまない、悪名高い映画監督エド・ウッドの作品。もちろん徹底したB級、それも思い切り振り切ったB級映画。
宇宙人が地球を侵略するのに、なぜゾンビ?この辺りからすでにエド・ウッド節全開だ。チープなセット、どう見ても後ろの出入り口にカーテンを引いただけの普通の部屋にしか見えない航空機のコクピット、昔休日午後にテレビでやっていたB級映画の雰囲気がする。
そのくせ思いっきり正論の政治、社会批判が、やや脈略もなく飛び出すところがまた楽しい。「その心余りて、言葉足らず」は、紀貫之による在原業平の評価だが、まさにこの作品もそんな評価がぴったりだ。
制作は1959年。1954年にはゴジラが東京を蹂躙し、1956年にはラドンが当時の福岡に飛来して屋根瓦を一枚一枚吹き飛ばし、1961年にはモスラが東京タワーに繭をかけて羽化。このチープな作品がSF映画だった時代を考えれば、円谷怪獣映画のクオリティが世界の度肝を抜いたのももっともだ。
おおらかな気持ちで、笑って観よう。
あの、ティム・バートンが愛してやまない、悪名高い映画監督エド・ウッドの作品。もちろん徹底したB級、それも思い切り振り切ったB級映画。
宇宙人が地球を侵略するのに、なぜゾンビ?この辺りからすでにエド・ウッド節全開だ。チープなセット、どう見ても後ろの出入り口にカーテンを引いただけの普通の部屋にしか見えない航空機のコクピット、昔休日午後にテレビでやっていたB級映画の雰囲気がする。
そのくせ思いっきり正論の政治、社会批判が、やや脈略もなく飛び出すところがまた楽しい。「その心余りて、言葉足らず」は、紀貫之による在原業平の評価だが、まさにこの作品もそんな評価がぴったりだ。
制作は1959年。1954年にはゴジラが東京を蹂躙し、1956年にはラドンが当時の福岡に飛来して屋根瓦を一枚一枚吹き飛ばし、1961年にはモスラが東京タワーに繭をかけて羽化。このチープな作品がSF映画だった時代を考えれば、円谷怪獣映画のクオリティが世界の度肝を抜いたのももっともだ。
おおらかな気持ちで、笑って観よう。
「エリシウム」を観る ― 2021年12月28日 20:46
「エリジウム」を観る。
軌道上のコロニー「エリジウム」には裕福な階級が贅沢な暮らしを満喫し、奇跡的な医療体勢が整っている(「ハーモニー」の「ウォッチ・ミー」も連想するが)。一方地球上はスラム化し、貧困と治安悪化が進んでいる。
主人公はそんな中で、やっと手に入れた仕事の最中に致命的な事故に会い、余命数日という状態になる。生き延びるためには、レジスタンスに身を投じ、エリジウムに潜入し、個人データをハッキングして医療ポッドに入って治療するしかないのだが…
ジョディ・フォスターが冷徹な悪役として登場するが、あまり実在感がない。紋切り型の悪役で、これは脚本段階での問題だろう。貧困層対富裕層の二項対立、富裕層は悪役で貧困層は善玉というのも王道中の王道。マッドな敵との肉弾戦もこれまたお約束どおり。安心して観ていられる勧善懲悪SFアクション。ラストもさほど驚くこともなく…時代劇にもよくある落とし方だ。
ハンバーガーやジャンクフード、あるいはソウルフード的な作品として破綻なくまとまっている。
軌道上のコロニー「エリジウム」には裕福な階級が贅沢な暮らしを満喫し、奇跡的な医療体勢が整っている(「ハーモニー」の「ウォッチ・ミー」も連想するが)。一方地球上はスラム化し、貧困と治安悪化が進んでいる。
主人公はそんな中で、やっと手に入れた仕事の最中に致命的な事故に会い、余命数日という状態になる。生き延びるためには、レジスタンスに身を投じ、エリジウムに潜入し、個人データをハッキングして医療ポッドに入って治療するしかないのだが…
ジョディ・フォスターが冷徹な悪役として登場するが、あまり実在感がない。紋切り型の悪役で、これは脚本段階での問題だろう。貧困層対富裕層の二項対立、富裕層は悪役で貧困層は善玉というのも王道中の王道。マッドな敵との肉弾戦もこれまたお約束どおり。安心して観ていられる勧善懲悪SFアクション。ラストもさほど驚くこともなく…時代劇にもよくある落とし方だ。
ハンバーガーやジャンクフード、あるいはソウルフード的な作品として破綻なくまとまっている。
「イカリエ-XB-1」を観る ― 2021年12月28日 20:36
「イカリエ-XB-1」を観る。
1963年、チェコで制作されたSF映画。モノクロ作品。
40名ほどの乗員を乗せて生命探査の旅に出た宇宙船、イカリエ-XB-1の物語。ポーランドの小説家、スタニスワフ・レムの「マゼラン星雲」の映画化だというが、原作は未読。レムはあの「ソラリス」で有名だ。
生命探査の度に出る男女混成の宇宙船…もちろん、あのUSSエンタープライズを連想するが、どうやらこの作品の方が先行し、アメリカでも上映されていたらしく、スター・トレックに影響を与えた可能性があるらしい。
ゴーストスペースシップや核兵器の恐怖、未知の現象による危機や未知の文明、生命体との遭遇といった基本は全部ここにある。時代的な成約もあってお行儀がよすぎたり、今の目からすればちょっとずれている点はご愛嬌。至ってシリアスな作品。埋もれてしまうには惜しい。
1963年、チェコで制作されたSF映画。モノクロ作品。
40名ほどの乗員を乗せて生命探査の旅に出た宇宙船、イカリエ-XB-1の物語。ポーランドの小説家、スタニスワフ・レムの「マゼラン星雲」の映画化だというが、原作は未読。レムはあの「ソラリス」で有名だ。
生命探査の度に出る男女混成の宇宙船…もちろん、あのUSSエンタープライズを連想するが、どうやらこの作品の方が先行し、アメリカでも上映されていたらしく、スター・トレックに影響を与えた可能性があるらしい。
ゴーストスペースシップや核兵器の恐怖、未知の現象による危機や未知の文明、生命体との遭遇といった基本は全部ここにある。時代的な成約もあってお行儀がよすぎたり、今の目からすればちょっとずれている点はご愛嬌。至ってシリアスな作品。埋もれてしまうには惜しい。
「ブレードランナー 2049」を観る ― 2021年08月17日 11:43
「ブレードランナー2049」を観る。
あの「ブレードランナー」の続編。最近のリドリー・スコットがリメイクするのはどうかと思うが、今作はドゥニ・ヴィルヌーヴ。テイストは全作とは対象的と言っていいほど違う。
前作の猥雑で喧騒に満ちた雨のパンキッシュな都市は魅力的なディザスター世界だったが、今回はむしろ静謐でどこか無機質。アジア系大画面広告は健在だが、こちらも前作のように異様な時代錯誤的日本イメージではなく、もっとポップでセクシーになった。
ライアン・ゴズリング演ずる主人公は最初から新型レプリカントで、名前はなく記号で呼ばれるブレードランナー。だがどうやら彼の中ではシンギュラリティが起きつつあるらしい。次第に感情らしきものが芽生え始めている。ここは前作ロイ・バティのオマージュなのかもしれない。
前作では明確にされていなかったペット問題だが、今回はAI人格として大きな意味を持っている。主人公が家にセットしているAIはとんでもなくチャーミングだが、部屋から外に持ち出せない。その彼女を主人公はポータブル端末にダウンロードし、携帯するようになる。このAIはさほど高機能なものではないらしいが、とにかく健気で、主人公に献身的に自己犠牲を捧げながら、主人公に人間らしい名前を与え、人格の形成に大きな役割を果たしている。
ラスト近く、果てしなく続く砂漠のなかの廃墟となったラスベガスのイメージも圧巻。そう言えばヴィルヌーヴの次回作はあの「砂の惑星」だ。ラスベガスの映像を見た瞬間から、「砂の惑星」への期待度は一気に跳ね上がっている。
上映時間も長く、静謐な描写も多い。繊細な作品と言っていいだろう。こういう続編でよかった。大ヒットはしなかったが、それは前作とて同じこと。リドリーでは絶対になしえない、新たな世界を楽しむべきだ。
あの「ブレードランナー」の続編。最近のリドリー・スコットがリメイクするのはどうかと思うが、今作はドゥニ・ヴィルヌーヴ。テイストは全作とは対象的と言っていいほど違う。
前作の猥雑で喧騒に満ちた雨のパンキッシュな都市は魅力的なディザスター世界だったが、今回はむしろ静謐でどこか無機質。アジア系大画面広告は健在だが、こちらも前作のように異様な時代錯誤的日本イメージではなく、もっとポップでセクシーになった。
ライアン・ゴズリング演ずる主人公は最初から新型レプリカントで、名前はなく記号で呼ばれるブレードランナー。だがどうやら彼の中ではシンギュラリティが起きつつあるらしい。次第に感情らしきものが芽生え始めている。ここは前作ロイ・バティのオマージュなのかもしれない。
前作では明確にされていなかったペット問題だが、今回はAI人格として大きな意味を持っている。主人公が家にセットしているAIはとんでもなくチャーミングだが、部屋から外に持ち出せない。その彼女を主人公はポータブル端末にダウンロードし、携帯するようになる。このAIはさほど高機能なものではないらしいが、とにかく健気で、主人公に献身的に自己犠牲を捧げながら、主人公に人間らしい名前を与え、人格の形成に大きな役割を果たしている。
ラスト近く、果てしなく続く砂漠のなかの廃墟となったラスベガスのイメージも圧巻。そう言えばヴィルヌーヴの次回作はあの「砂の惑星」だ。ラスベガスの映像を見た瞬間から、「砂の惑星」への期待度は一気に跳ね上がっている。
上映時間も長く、静謐な描写も多い。繊細な作品と言っていいだろう。こういう続編でよかった。大ヒットはしなかったが、それは前作とて同じこと。リドリーでは絶対になしえない、新たな世界を楽しむべきだ。
「ゼロ・グラビティ」を観る ― 2021年08月17日 11:25
「ゼロ・グラビティ」を観る。2013年のアメリカ・イギリス映画。
なんとも小ぶりな映画だ。上映時間の短さもそうだし、淡々と進むストーリーも同様。宇宙空間は生命を拒絶する死の空間であり、そんなところに滅多矢鱈と人工衛星を打ち上げては、処理しきれないほどのゴミまみれにしているのだから、この作品で取り上げられた事故は、遅かれ早かれ起きるにちがいない。
そのまま、ただひたすらリアルに…というわけにはいかないのは大人の事情か。死亡フラグ立ちまくりのジョージ・クルーニー、生き残りフラグ立ちまくりのサンドラ・ブロック。ラスト近くの妄想ネタまで…どこかで見たようなテイストのストーリーは、ハリウッド・ヒットメイカー・コードの基本に忠実だが、なんとなく災害バラエティの再現ドラマ風で、無機質な宇宙の静かな恐怖とは反りが合わない。
上映時間の短さは、宇宙の過酷さを表現する厳しさ、使い古されたドラマの古めかしさから、限界だったのだろう。
カウチポテトには最適。豪華版再現ドラマとしては秀逸か。
なんとも小ぶりな映画だ。上映時間の短さもそうだし、淡々と進むストーリーも同様。宇宙空間は生命を拒絶する死の空間であり、そんなところに滅多矢鱈と人工衛星を打ち上げては、処理しきれないほどのゴミまみれにしているのだから、この作品で取り上げられた事故は、遅かれ早かれ起きるにちがいない。
そのまま、ただひたすらリアルに…というわけにはいかないのは大人の事情か。死亡フラグ立ちまくりのジョージ・クルーニー、生き残りフラグ立ちまくりのサンドラ・ブロック。ラスト近くの妄想ネタまで…どこかで見たようなテイストのストーリーは、ハリウッド・ヒットメイカー・コードの基本に忠実だが、なんとなく災害バラエティの再現ドラマ風で、無機質な宇宙の静かな恐怖とは反りが合わない。
上映時間の短さは、宇宙の過酷さを表現する厳しさ、使い古されたドラマの古めかしさから、限界だったのだろう。
カウチポテトには最適。豪華版再現ドラマとしては秀逸か。
最近のコメント