ナボコフ「賜物」読了2015年11月24日 17:51

 ウラジーミル・ナボコフの「賜物」を読了。

 なんともペダンチックな作品。延々と繰り広げられるロシア詩の構造論や鑑賞は、翻訳という限界もあって、なんともついていくのに難儀した。また、文中にふんだんに投入される言葉遊びや本歌取り的パロディ・隠喩の類の多さにも幻惑。

 おまけに時間軸は前後し、主語までもいつの間にかすり替わっていくという、なんとも掴みどころがない文体。そして一章分はまるまる小説内小説である。うかうか読んでいると、作品に置いてきぼりにされてしまい、ぼんやり読んでいると、読むこちらも夢幻の境地へ…

 詳細な注のおかげで、理解は非常に助けられたが、逆に本文を読むことに関しては間断ない中断を余儀なくされてしまい、これまたハードな壁が読者の前に立ちはだかっている。

 しかし、ラストのなんとも肯定的な、そして滑稽なシーンには明るい笑みと希望がほの見える。読者の苦労は、主人公のこのラストに至る苦労とも重なる。難読だが、挑戦する価値は十分ある。