「わたしは英国王に給仕した」読了2016年01月21日 23:10

 ボフミル・フラバル著「わたしは英国王に給仕した」を読了。

 どこか飄々とした主人公の一代記。ファンタジックなようで、猥雑でもあり、ありえないようで、実は実話を下敷きにしていたりする、そんな不思議な物語だ。主人公が貧しい少年時代から、その短躯というハンデをものともせず、様々な、それも一風変わったホテルで働き、濡れ衣を着せられて解雇され、また転職する。

 時代は20世紀、場所はチェコ。ナチスに蹂躙され、共産主義独裁に翻弄されるチェコの中で、主人公は給仕長にのし上がり、ナチに身を置く恋人と結婚してチェコの同胞から白眼視され、戦後は妻が同胞から略奪した高額な切手を売って大金持ちとなり、自らホテルのオーナーとなり、そして共産主義独裁ですべてを失っていく。悲惨な人生のようだが、悲劇と喜劇が主人公を同時に襲い、決して重苦しい話にはならない。

 ラストシーンも含め、幻想的なシーンが多く、映像的にも素晴らしい。映画化もされているというが、宜なるかな。

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