クリュイタンスの第九を聴く ― 2018年12月30日 23:32
フランスの名指揮者、アンドレ・クリュイタンスが指揮したベートーヴェンの第九を聴く。
トスカニーニのような、真正面からけんかを売ってくるかのような激しさはなく、フルトヴェングラーのように威圧する感じでもなく、ガーディナーのような超高速でもない。悠揚迫らぬ出だしだ。柔らかく、ふわっと、そして、いつしか聴くものを引きずり込み、ゆったりと包み込んでいく。だが一度包み込まれてしまうと、曲の激しいうねりに翻弄されていく。刺激性がないため、気がつけば取り込まれてしまう。そんな不思議な演奏だ。辛口の大吟醸酒のような味わい。すっと入り込み、気がつけば足を取られる。
押し付けがましさは皆無。リズム感もどことなく独特。明らかにドイツ系の曲作りとは違うが、癖になるような感じだ。つねに節度を失わず、誠実に、上品に。髪振り乱し、激しく叩きつけるようなベートーヴェンではなく、酸いも甘いも噛み分けた、柔らかく穏やかなベートーヴェンの姿が思い浮かぶ。
クリュイタンスといえば、ラヴェルの名演奏で有名だが、それにも一脈通ずる高雅な雰囲気がいい。ノーブルなベートーヴェンがあってもいいではないか。それも第九なら特に。ホッと安らかな気分に、そして最後に清らかな気分にしてくれる演奏だ。背中を叩くわけでもなく、居住まいを正して説教を受けるわけでもなく、そっと寄り添い、ともにいてくれる、そんな第九は、いい。
トスカニーニのような、真正面からけんかを売ってくるかのような激しさはなく、フルトヴェングラーのように威圧する感じでもなく、ガーディナーのような超高速でもない。悠揚迫らぬ出だしだ。柔らかく、ふわっと、そして、いつしか聴くものを引きずり込み、ゆったりと包み込んでいく。だが一度包み込まれてしまうと、曲の激しいうねりに翻弄されていく。刺激性がないため、気がつけば取り込まれてしまう。そんな不思議な演奏だ。辛口の大吟醸酒のような味わい。すっと入り込み、気がつけば足を取られる。
押し付けがましさは皆無。リズム感もどことなく独特。明らかにドイツ系の曲作りとは違うが、癖になるような感じだ。つねに節度を失わず、誠実に、上品に。髪振り乱し、激しく叩きつけるようなベートーヴェンではなく、酸いも甘いも噛み分けた、柔らかく穏やかなベートーヴェンの姿が思い浮かぶ。
クリュイタンスといえば、ラヴェルの名演奏で有名だが、それにも一脈通ずる高雅な雰囲気がいい。ノーブルなベートーヴェンがあってもいいではないか。それも第九なら特に。ホッと安らかな気分に、そして最後に清らかな気分にしてくれる演奏だ。背中を叩くわけでもなく、居住まいを正して説教を受けるわけでもなく、そっと寄り添い、ともにいてくれる、そんな第九は、いい。
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