「桃太郎 海の神兵」を観る2021年08月17日 11:34

 「桃太郎 海の神兵」を観る。1944年の日本製アニメ。

 当然国策映画なので、そういう匂いは紛々と漂う。それを超えて当時のアニメーション表現の素晴らしいこと。過酷な国情、食糧事情、経済状況などを勘案すれば、まさにブラック中のブラック労働の中で「お国のために」「これからお国を守るために戦う少国民のために」という同調圧力の中、できる限りの情熱をつぎ込んだ作品なのだろう。

 だが、作中の命の軽いこと。

 桃太郎隊長の命で偵察飛行に出た3人(動物だが、あえて3人と表現する)は、わずか数分後に2人で帰投、あっさりと1名戦死と報告。それを聞いた桃太郎、驚愕する風もなく、平然と報告を聞く。尋問シーンの桃太郎に至っては、いやらしい軍人口調むき出し。それがまたいかにもアニメ風の可愛らしい声なのだから、背筋に冷たいものが走る。

 これこそが戦争の狂気だと言わんばかり。もちろん当時はそんなこと考えもしなかったのだろうが。

 俗に言う日本アニメ(もちろん戦後作品を指す)のなかで、これほど強烈に戦争の狂気を突きつけてくるものを見た記憶はない。

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