「シャイニング」を観る2022年05月19日 00:11

 「シャイニング」を観る。1980年、スタンリー・キューブリックの作品。

 あまりに有名だが、なかなか御縁がなかった映画の一つ。やっときちんと観たと言ったところ。

 原作のスティーブン・キングが嫌がったのは有名な話だが、もともとキューブリックはそういう作風(あの「2001年宇宙の旅」だって、原作のクラークからは厳しいコメントを受けている)なのだし、それはそれ、これはこれで見るのが得策。比べることにさほど意味はないと思う。

 ホラーといえばホラーだが、普通のホラーではない。ここで一番怖いのは、主人公ジャックを狂気に引きずり込む存在そのもの。因縁話でそれらしいオチは付けているが、それはどちらかといえば余興(伏線は張ってあったが)。狂気のもとはWASPとマチズムの問題そのものだ。独善的で弱者には平然と搾取と狼藉を働き、あまつさえそれを正当化して優越感に浸る。それが認められない時代が来ると、ノスタルジーを隠れ蓑に感情で他人をコントロールする。その本質は支配欲と権益保持、つまりは人間の「あさましさ」だ。アメリカの暗部そのものでもあり、人類の暗部そのものでもある。

 今の世界情勢を見ると、なんとまあこの作品の「ジャック」が多いことか。そしてこの世界同時多発的に出現する「ジャック」の眷属が実際に権力の座についている現実を見ると、現実のほうがホラーそのものだと思えてしまう。今のほうがこの映画、アナロジーとして観るとよりゾッとする。そういう人間の暗部を見抜く「シャイニング」を持ちたいものだ。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://crowfield.asablo.jp/blog/2022/05/19/9491830/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。