「エスパイ」を観る2023年02月27日 21:14

 「エスパイ」を観る。1974年、福田純監督の日本映画。原作は小松左京。主演は藤岡弘、、由美かおる、草刈正雄。

 いきなりオープニングが尾崎紀世彦の歌。メロドラマともムード歌謡とも取れない曲。実に座りが悪い。

 藤岡は当時の東宝特撮で日本沈没の小野寺を演じているが、なんと言ってもこの頃は「仮面ライダー新1号・本郷猛」のイメージがまだ強かった頃。由美かおるは当時から映画ではきれいなセミヌードで(今でもそうだが)セクシー路線。草刈正雄はどこかナイーブな青年(今ではエキセントリックだ)。役者イメージ先行という感が強い。

 人間ドラマは原作を軽くなぞっているが、希薄で皮相的。悪役のテイストも今ひとつ。老師のメイクにいたっては、もっとどうにかならないかという、当時の東宝特撮クオリティ。特撮も頑張っている割に空振り感。70年代の東宝特撮はそれ以前の何かを失っている。一番頑張っているのが炎上スタントマンというのは少々つらい。脚本もどこかぬるい上に、途中投げ出し感まで漂う。

 日本の特撮技術がどこか作品と噛み合わなくなってきた頃、アメリカではそろそろスターウォーズの予兆が現れ始めているころ。映画がTVに食われて衰退していたころの寂しさを感じさせる一本。