「セッションズ」を観る2018年04月23日 23:30

 「セッションズ」を観る。

 実話をモデルにした作品。ポリオで首から下が麻痺してしまった主人公が、38歳で初体験のために性的セラピーを受けることになる。とまあ、そのとおりの話なので、下世話に考えればエロ映画ととられてしまいそうな作品だ。実際R15+指定になっている。

 確かにセラピーのシーンはあるし、おかげで例の如くの不自然なぼんやり画像修正もあるが、それがこの作品の本質ではない。というより、ぼけぼけ修正が、それを観て判断を下す側の不謹慎さの表れのように思えて、逆効果のように感じてしまう。

 人が出会い、何かを失い、新しい生き方に歩み出す。登場人物たちにとって、それが初体験であったり、宗教であったり、旅立ちであったりする。それだけのことだ。

 カトリック信者の主人公と親しくなる神父がまたなんともいい味を出している。顔には深いシワが刻まれているが、老人ではない。厳格そうな表情だが、どこか飄々としていて受容性に富んでいる。そして教会のキリスト像。十字架にかけられた苦悶のキリストの姿ではなく、慈愛に満ちた合掌姿のキリストが見守る聖堂で、不謹慎とも取れるようなセラピーの報告をするシーンなど、性の本来持っているおかしみまで感じてしまう。

 障がい者について、性について、愛情について、声高でもなければ、下世話でもなく、大げさでもなく、静かに、おおらかに、ユーモアを忘れずに描かれた、いい映画だ。

 つくづく、R15+指定というのが惜しい…でも、こればっかりはなぁ…