スポーツ界のパワハラ2018年03月01日 23:44

 某スポーツ選手が、育成団体からパワハラを受けたと告訴、告訴された団体はそんな事実はないと反論した。

 当然だろう。というより、スポーツ界そのものがパワハラ(セクハラ含む)で成り立っているようなものではないのか。

 能力や人格の有無・尊卑とは無関係な、単に年齢による序列が絶対権力の裏付けとなる先輩・後輩の地位。というより、これはもうほぼ身分制度と言っていいだろう。年齢差には逆転はありえないし、ましてそれは当人の能力とはまったく関係のない、生年月日が根拠なのだから。

 実績に物を言わせ、実績のあるものはあらゆる点でカリスマとなり、絶対権力者となって君臨し、批判を許さない。その結果、ずさんな金遣いや横紙破りが横行する。どのスポーツでも大なり小なり、この傾向を持っている。新興スポーツも、よほどこれらの旧弊な体質に対する警戒と批判精神を持たない限り、同じ轍を踏むだろう。

 こんな連中が、パワハラを訴えられても、その事自体を理解する能力すら持ち合わせていないだろう。自分たちの「当たり前」が、もはや社会では指弾される対象となっていることに気づくぐらいなら、端からそんな物騒な権勢にしがみつくのは止めるはずだ。

 プロ・アマ問わず、スポーツ界の本質にパワハラ体質は染み付いている、というより、パワハラこそが彼等の社会の本質なのかもしれない。そんな中では、批判的な「頭脳」など迷惑千万。権威に盲従し、思考を停止させ、結果さえ出せばよい。これが俗にいう「体育会系」の本質なら、それをありがたがっているどこかの国の経済界もまた、推して知るべし。

 ただ、スポーツ界も、そんな隷属的存在ではもはや勝ち目がないことを悟り、パワハラ体質からの脱却を模索する集団や個人が現れ、成果も出始めているようだ。産業・経済界でも、従来の体育会系はやっと忌避される傾向が生まれ始めている。これを機に、無能な権威者や実績保持者、年長者をきちんと批判し、泣いて馬謖を斬るほどの覚悟で、決別すべきものとは決別しなくてはならないだろう。

 過去の実績は所詮過去。その実績を現代に、そして未来につなげることが出来るかどうかは、けっして特権によって保証されるものではない。むしろ特権こそが過去の栄光に泥を塗り、地に貶し、踏みにじるものに違いない。過去を否定する覚悟のない者の精神力など、取るに足りない。そんな精神力では、過去の栄光すら支えきれない。

 パワハラそのものも問題だが、自分たちがパワハラに依存して異来ていることに気づかないことのほうが重症だ。

金のかけどころ2018年03月04日 23:57

 オリンピックでいい成績が出たのは、コーチやら練習環境やらに金をきちんとかけたからだという話を、どこかの政治家がしたそうだ。

 たしかにそれは一理ある。

 それなら、子育てや保育、介護に従事する人、モノにもきちんと金をつきこんだら、もっと稼げる人間が増えて景気とやらももっと上向くのではないのだろうか…

 教員数を削減し、保育士や介護士に世帯も持てないような低賃金しか保証してやれないようでは、とても経済的に「いい成績」は出せないのではなかろうか。

「地下鉄道」読了2018年03月06日 00:29

 コルソン・ホワイトヘッド「地下鉄道」を読了。

 1830年代、一人の女性黒人奴隷、コーラの逃亡劇。南北戦争以前の南部の地獄のような黒人奴隷の生活や、残虐な仕打ちがありありと描き出される。作品はフィクションではあるが、事実をもとに綿密な取材をベースに描かれている。だが、極端に露悪的になることもなく、また、人権思想を声高に叫ぶこともなく、ドライに、エンタテインメント性も十分に備えている。

 コーラ以前に脱走したコーラの母メイベルの話が、コーラの意識につねにある。母を憎み、憧れる矛盾した内面が、コーラのキャラクターを陰影あるものにする。そして、末尾近くの短い章で、なんともやりきれない気持ちにさせられる。

 コーラを追うのは奴隷狩りのリッジウェイ。粗暴にして孤高、凶暴にして公正。メイベルを取り逃がした彼はコーラの捜索に執念を燃やすが、それは奴隷制擁護のためでもなければ、白人至上主義ですらない。そこがリッジウェイに魅力を与えてもいる。

 奪った土地を専有するものは、つねに奪還の恐怖に怯え、自己を正当化する理屈を作り上げては、それに抵触するものを完膚なきまでに残酷に破壊し、殺戮する。この作品ではそれはアメリカの白人であり、また、白人同士、そして時には黒人同士の間にも起こる惨劇となる。この作品が描く破壊と殺戮は、じつはアメリカのみならず、全世界、全ての人類に普遍の残虐性なのだろう。

 そして、その残虐性を捨て去るのも、増長させるのも、学問を通じ、経験を通じて人の思考が生み出す理屈である。

 重い話ではある。だが、エンタテインメントとしても完成されている。それに、現実には暗号でしかなかった「地下鉄道」を、リアルなインフラとして設定し、それが作品全体のシンボルとして機能しているなど、面白さも十分だ。

「日本語全史」読了2018年03月07日 23:24

 沖森卓也「日本語全史」を読了。

 ちくま新書の中でも400ページ超えの大作。お値段もそれなり。

 日本語の変遷を、万葉時代から現代まで、簡潔に述べていくのだが、学校では無味乾燥なものでしかなかった日本語の文法の変遷には、新たな発見もあり、興味深かった。

 印象的なのはあとがき。「社会が変化するように、ことばも変化するものであり、変化の中にこそ人間の真の姿があると言える。その意味で、ことばの乱れ、ことばの揺れ、ことばの変化は、ことばの自然なあり方なのである。」とある。

 巷で何かと耳にする「美しい日本語を守ろう」「最近のことばの乱れは許せない」などという言説が、いかに恣意的で危険なものか、思い知らされるような言語観だ;

三寒四温2018年03月08日 23:05

 春先の気温は三寒四温といわれるが、たしかにそのとおり。

 暖かくなったと思ったら、ぐっと冷え込んだり。春の嵐もある。

 今年は噴火も発生し、花の季節も遅れ気味だ。