カフカ「失踪者」/ヴォルフ「カッサンドラ」読了2015年04月30日 06:08

 カフカ「失踪者」/ヴォルフ「カッサンドラ」読了

 どうしてカフカの主人公はいつもこんなに無分別で、おまけに不運続きなのだろう。文字通りこの作品の主人公もふんだりけったりの状態である。失踪するまでは。

 ところが、失踪してしまうと、どういうわけかそこでなんとか生きていっている。一般的には不幸な底辺に置かれているのだが、どうやらそこが一番落ち着いているらしい。

 警官にはしょっちゅう絡まれ、ゴロツキには付きまとわれ、パワフルな女にはいいように振り回され、親切な女とは縁を失い、嫌な上司には爪弾きにされ、でも最後にはどっこい生き延びていく。

 未完の作品だが、断章部分にはどことなく救いも感じる。

 「カッサンドラ」はトロイア戦争を舞台に借りた旧東ドイツ、というより、ヨーロッパ社会主義国家の問題点を提起した作品。一人称の回顧で、少々読みづらかった。東ドイツ崩壊直前の社会情勢を下敷きにして読むと良かったのだろう。

 為政者の言論・思想弾圧が強まれば、風刺による告発が現れるのは、どこの国も同じだ。ベトナム反戦が下敷きになって生まれたのが「スター・トレック」出会ったのと同様。弾圧をする為政者は、そのような風刺を理解するほどの想像力を欠落させている。だからこそ弾圧という強行手段に訴えるしかない、無能さを露呈するのだろう。