「クラウド・アトラス」を観る2022年06月28日 20:46

 「クラウド・アトラス」を観る。2012年、ウォシャウスキー姉弟とトム・ティクヴァの監督、ドイツ・アメリカ合作映画。

 19世紀から24世紀までの6つの物語を描き、年代記風にまとめられた作品。俳優はそれぞれの時代で複数の役を演じている。時系列順ではなく、6つの時代がモザイク的に進行するので、世界観を掴むまでは多少我慢も必要な作品。

 冒頭のシーンがラストシーンとつながってこの長い物語は円環を閉じる構成となっている。なにせ172分の大作。ファスト映画ばかりだととてもついていけないだろう。映画も食べ物も、何もかもファストというわけにはいかない。スローはスローの味がある(もちろんファストで十分という映画も、今も昔もたくさんある…ファストどころか、瞬殺ものも…閑話休題)。

 6つの物語に共通するのは、社会や常識、権力(暴力も)に抑圧され、それに反抗し、自由を希求する人間の姿。それぞれ犠牲を払いながら、時には命も失いながら、それでも人は自由を求めてやまない。そういう人間感が全編を貫いている。また、それぞれの舞台となっている社会の常識が(特に過去の物語においては)現代では誤りであり、場合によっては悪となっているという事実も明らかになる。どんなパラダイムも所詮諸行無常、それでも人は自由を、尊厳を求めることをやまない。そういういい意味でのオプティミズムにあふれている。

 3時間、劇場でも座るのが(そしてトイレも)辛い時間だ。自宅ならもっとくつろげるのだろうが、世知辛い日常生活の空間では、現代、3時間のゆったりとした時間は贅沢となってしまったのかもしれない。映画館は時空間をまるごと買える希少な場所だが、それを消費するにも体力が必要なのは寂しい。