「ロング・グッド・バイ」2015年07月26日 06:11

 世評の高い村上春樹訳の「ロング・グッド・バイ」。刊行直後に読んだのだが、その時の雑感を。

 一番引っかかったのは「はんちく」。ほかにも「棒だら野郎」など、いくつかの侮蔑語が訳出されているが、その多くが私の住む地域の言語環境では全く使われていない語である。

 前掲の「はんちく」は、調べてみると東京方言とされている文献があった。なるほど、東京の、それも江戸語あたりが身近な読者には非常にマッチした悪態なのだろう。

 だが、東京方言が全国で通用するわけではない。いかに「東京」とは言え、「方言」なのだから。

 だから、残念ながら氏の訳に現れる侮蔑語からにじみ出る皮膚感覚や嫌悪感、侮蔑感は全く私には伝わらない。文脈から侮蔑語であることはわかるのだが、下手をすると原書の英単語のほうがより伝わってくるかもしれない。

 ほかにも旧清水訳と比べれば、妙に直訳調で会話のテンポがくどい(このゆるさは村上文学と共通するか?)など、気になるところは多いが、氏の言語感覚が東京を中心としたローカル性を強く持っていることが、今回私の違和感を強くしていることは確かだ。

 とは言え、言語圏限定「ロング・グッドバイ」バージョンというわけにもいくまい。所詮アメリカ文学。どこかアウェイ感を残しているのも「翻訳」なのかもしれないが。

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