「言の葉の庭」鑑賞2016年11月06日 22:57

 今をときめく「君の名は。」の新海誠監督の前作「言の葉の庭」を鑑賞。ずいぶん以前から録画しておいたのだが、なかなか見る機会を作れずに、やっと鑑賞したというところ。

 静かな作品というのが第一印象。自然と都会の景色や風物の美しさはもちろんだが、雨、水の表現が素晴らしい。「ほしのこえ」でも雨は印象的だったが、水音などしないのに水の音が聞こえ、雨の匂いと冷たさが感じられるような世界。

 世界全体は雨のち晴れ。それも雨のち嵐、のち晴れといった感じだ。そして、言葉。「君の名は。」でもそうだったが、文字としての言葉ではなく、文字通り「言の葉」。もどかしいコミュニケーション、口に出さない思いを追い越すように、今回も手仕事、主人公が目指す靴職人としての手仕事が、ヒロインとの距離を縮めていく。「君の名は。」では組紐で、このテーマは変奏されていた。

 ちなみに、ヒロインは「君の名は。」でも登場している。同一人物設定であるかどうかはともかく、作品同士の紐帯の・ようなものを感じた。

 エンタテインメントに妥協しなかった「君の名は。」に比べ、やはり地味で渋いが、それは45分という作品時間に反映されていると言えるだろう。というより、この世界にSF的世界観とサスペンスを注入すると、120分程度の時間はかかるだろう(が、その代わりこの作品のポイントはボケてしまう)。

 映画やアニメーションにエンタテインメントと受け身の娯楽を求める向きには、この作品はそりが合わないだろう。だが、この世界に身を委ねるゆとりと意思があれば、優れた小品として楽しむことができる。