「ラ・ジュテ」を観る2023年04月11日 21:50

 「ラ・ジュテ」を観る。1962年のフランス映画。監督はクリス・マルケル。

 わずか30分足らず。おまけに全編モノクロ。そしてほとんどが静止画で構成され、主人公らしい男の一人語りで進行するSF映画。宇宙船も出なければ、エイリアンも出ない。

 主人公の男は、子供の頃の記憶に強い執着を持っている。それは空港で男が撃たれたのを目撃した記憶と、一人の女性の面影の記憶。その記憶への執着が、多くの死者を出した過去へのタイムトラベル実験で彼が成功した原因だった。実験が行われたのは第三次世界大戦後の廃墟と化したパリ。

 第三次大戦直前の過去へ戻り、記憶の中の女性と出会い、恋に落ちる主人公。そして…

 テリー・ギリアムの「12モンキーズ」が、この作品からインスパイアされたという話は有名(というより、アイディアは全く同一)。ざらついたモノクロ静止画画面が不安的で危険なタイムトラベルと、執着した記憶のイメージとマッチして印象的だ。

 ただし、疲れているときには辛い映画。わかりやすいハリウッド映画のつもりでみていると難解だし、疲労が溜まっていると夢幻の世界に引きずり込まれていく。もっともそれもいいのかもしれないが。

 喧騒とキッチュさに溢れた「12モンキーズ」だが、「ラ・ジュテ」は静謐でザラッとした手触り。対照的なのも面白い。

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