ブルガーコフ『巨匠とマルガリータ』読了2014年09月14日 21:55

 抑圧され、底なしの失意にある人々が入れ子構造になって存在する。それぞれが救いと自由を求めて苦しみ、救済され、または救済を夢見ながら日々を生きていく。

 と、重苦しい世界を背景としながら、悪魔とその一味の、グロテスクでもあり、滑稽でもあり、痛快でもある大暴れが前編を貫いている。この悪魔というのがなかなかどうして、憎めない。閉塞し、腐敗しきった社会を痛快に破壊し、おちょくり倒す。悪魔というより、悪漢。ピカレスクロマンの匂いが強い。猥雑でもあり、滑稽でもあり。チャイナ・ミエヴィルの『ペルディート・ストリート・ステーション』を彷彿とさせる。

 主人公の巨匠、その「弟子」とされる詩人は、いずれも作者自身が強く投影されている。作者自身は悲劇的な最期を遂げたわけだが、作品には悲劇性より明るさが感じられる。

 600ページを超える大作ではあるが、晦渋なところは全くない。ハイテンポで進む幻想と悪夢と救済の物語。よい作品に出会えた。

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