Chat GPTでエントリーシート2023年06月25日 19:28

 ChatGPTでエントリーシートを書かせたり、宿題を書かせたり。それは当然だろう。

 別にAIの出現など待つまでもなく、世の中にはその手の書類の書き方指南の情報が溢れかえっている。エントリーシートの書き方など、リクルート情報を発信する側が指南している。つまりは「志願者の正体を見極めたい」企業に、求人を仲介する企業が「志願者情報の化粧法」を教えているわけだ。まさに仲人。意地悪な見方をすれば、企業に対する背信行為にもなりかねない。だいたい、企業にとって完璧に都合のいい人材などこの世にいるはずがないではないか。就職希望者にとって完璧に都合のいい企業がないのと同じだ。あるはずもない「完璧に都合のいい志願者」をテキストで作り上げるのだから、エントリーシートやら志望理由やらは夢幻にすぎない。ならばAIに書かせておいても何の問題があろうか。

 「ガクチカ」などとくだらないことに血道をあげているから、有能な人材は流出する。学生時代に頑張ったからと言って、就職し、世帯も持てば同じように頑張れる保証などない。人材はAIではないのだ。フリーで手に入るわけでもないし、金で買えるわけでもない。もちろん金をケチれば人材は逃げる。そして自分の人材は自分で育てるべきだ。もちろん何%かは必ず採用ミスがある。仕事だって100%はありえないのだから、それも当然受け入れるべきだろう。効率などとしみったれたことを言い続けると、「角を弛めて牛を殺す」ことになる。

 夏休みの宿題も然り。読書感想文など、所詮は不幸の暴露合戦に終わってしまうではないか。曰く「主人公と同じような不幸を、私も味わって云々…」幸せな生活をしている人間には到底勝ち目はない。物語(感想文も物語だ)の根本は人の不幸なのだから。幸せな人間が幸せに暮らしましたなんて、読むに耐えない。大抵の幸せな生活者にとって課題図書の登場人物の不幸もまた夢幻の世界。夢幻の文を書くための読書感想文の書き方指南も横行しているのだから、塾や受験産業に大枚はたくより、無料でAIに書かせたほうがお得である。

 どちらも、課題を出す側の怠慢と勉強不足が見え見えだ。人材が欲しいなら、それなりの三顧の礼を尽くすべきだし、三顧の礼を尽くす人材もまた企業が育成すべきだろう。人材を見極め、育成するのは製品を生み出すよりも重要な業務のはずだ。読書感想文も然り。本を読ませたいのなら「感想」ではなく、不幸の有無に関わらず取り組める論理的な「批評」を書かせるべきだ。「批評」を書くには1冊の本では足りない。多くの情報から知識を得る必要がある。そのほうがよっぽどたくさん「本を読んで」くれる。

 もっとも、書籍の流通の仕組みすら満足に知らない国語の教員が多いのも事実。読ませたい本がどのように宿題を出した子供全てに行き渡るのかまで考えるのがまず最初だろう。「どんな本でも」というのなら、評価する側も「どんな本でもどんと来い」といえる力が必要だし、それができないのなら、課題図書をすべての生徒に確実に確保させる工夫をすべきだ。図書館で借りてこいなどと脳天気なことを言われては困る。何人の子供に宿題を出していると思っているのか。宿題を出しているのは自分だけでもないだろうに。

 そういう外堀対策をきちんとしてから初めて「ChatGPT」に文句も言えよう。ChatGPTが暴き出したのは、ズルの方法ではなく、人間の思考や工夫の杜撰さだ。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://crowfield.asablo.jp/blog/2023/06/25/9597078/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。