今年のセンター試験2019年01月21日 22:10

 今年のセンター試験、国語の第一問の出典は沼野充義氏の文章だった。
 沼野氏はポーランドの有名なSF作家と目されているスタニスワフ・レムの翻訳で有名で、あの名作「ソラリス」のポーランド語原典からの翻訳を成し遂げた人物でもある(それまでの翻訳はロシア語からの重訳)。

 内容は翻訳についてのごく一般的なエッセイ的内容で読みやすいものだったが、大学入試の国語の問題にSF絡みの著者が登場するのは、かつて国語教員たちに蛇蝎のごとく嫌悪されてきたSFというジャンルの扱われようを思い出すと、隔世の感がある。

 「ソラリス」、ソダーバーグ作品より、やはりタルコフスキー作品のほうが、どれほど原作者レムに嫌われようと、私は好きだ。もう一度見てみようという気になった。もちろん原作も再読してみたい。

「寄港地のない船」読了2019年01月23日 23:32

 ブライアン・W・オールディスの第一長編、「寄港地のない船」を読了。

 長らく翻訳されなかった幻の処女長編ということだが、後のオールディスの作品の萌芽ははっきり読み取れる。

 主人公はロイはマッチョだが少々賢くない、いかにも体育系のほほん男。若干モラトリアム傾向もある。女房には尻に敷かれ、母親にも頭が上がらない。得意の狩りは不景気で、鬱憤が溜まっている。

 女房に急かされて狩りに行くのだが、彼らが住んでいるのはどうやら恒星間宇宙船の中。突然変異した植物が居住空間を侵食し、社会は中世レベルにまで退化。デッキの間の行き来もゲートの封鎖などで困難。そして奇妙な一族の襲撃で、妻を奪われ、ロイは処罰対象となる。

 そこに生ぐさ聖職者、マラッパーに誘われ、自分たちのコロニーを脱走し、宇宙船のコクピットと思われるところへと冒険が始まって…

 閉鎖された、あるいは異質な世界をトレッキングするという趣向は、後のオールディスの名作「グレイベアド」や、「地球の長い午後」にも引き継がれている。主人公がヒーロー然としていないところもまた同様。そしてラストのなんとも苦い落とし具合もまたオールディスらしい。

 最近、本作も含み、SF絡みの面白い作品を立て続けに出版する竹書房。注目していきたい。

「王たちの道3:自由への架け橋」読了2019年01月25日 22:44

 ブランドン・アンダーソンの「王たちの道3:自由への架け橋」を読了。原書では1冊だが、翻訳では3巻分割。それでも各巻ポケミス版で上下二段組み500ページ弱、トータル1400ページを超える大作だ。

 メインキャラクターが次第に接近し、ついに不屈の男カラディンが潜在能力を開放し、名将ダリナルとまみえるラストの大規模戦闘シーンはまさに圧巻。いい意味でこの二人、実に男臭く、そして魅力的だ。カラディン配下のブリッジマン第四隊がこれまたいい味を出している。ラストのシチューを囲む野営のシーンなど、微笑ましい。

 物語の発端となった王の暗殺の首謀者もわかり、ダリナルを悩ませた現王の暗殺計画の真相も解明され、各章の冒頭におかれた、様々な人々の死に際の謎めいた言葉の正体もわかり、ジャスナーとシャランの二人も新しい展開を見せる。謎は解明されたが、新たな謎は深まる。暗殺者スゼスとカラディンとの絡みも期待できそうだし、シャランの衝撃的な一言の真相はふせられたまま。そしてラストのなんとも不吉なエピローグ。当然本国では続編も刊行済だが、日本語で読めるのはいつのことか。もちろんそれなりのボリュームは覚悟しなくてはならないだろう。覚悟するだけの価値はある。

某グループの解散2019年01月27日 22:41

 某芸能グループが解散するそうだ。

 すでにメンバーが単独であれこれ露出していたのだから、解散話は数年前から予期できたし、さほど驚くにも値しない。驚くとすれば熱烈なファンか、彼らに依存してきたテレビ局程度のものだ。

 通常国会招集前日、それも直前に国民生活に大きな影響を与えるデータ収拾の不正が発覚しているという状況なのに、それよりこのグループの解散のほうが優先される報道番組すらあるのだから、テレビ局の動揺もなかなかのものだったのかもしれない。

 総選挙もどこかの芸能グループにお株を奪われ、今回もまた芸能ネタに政治報道はマスクされる。これでは不正やゴリ押しがまかり通るはずだ。